世界のトップチームが年に一度アジアに集うタイガー5s。今回は我らが日本代表も参戦!
Tiger5sトップ
<前へ
Tiger5s レビュー・第3弾
いよいよ多昌氏の「Tiger5sレポートの決定版」を数回に渡ってお送りします。Tiger5s の戦略としくみ、世界の実力勢力図、そして日本の過去と未来。。。。全てが凝縮された本邦初のスーパーリポート!

REPORT BY 多昌成朝
新時代を呼んだ’01年のタイガー5s
第13回

第六日:日本対イラン戦(プレート決勝)のつづき
しかし、前半戦の終盤に差し掛かったところで、日本に光が見えた。やはり相根効果がじわじわと出ている中、左サイドに深く切り込んだ前田はマイナス・パスで和泉に合わせて日本がいよいよ一点を返した。前田に代わった藤井でさらにパワーアップする日本が徐々にイランを苦しめながら前半が終了する。

後半一分に、ブラインドにされた田北がモエイニのシュートを防げず、ついにイランがスコアを5−1にするが、その後日本の攻める時間が明らかに増え始めた。ところが、調子を上げる日本は固着状態以上の成果は上げられず、観衆がぶつぶつ言いながらとてつもなく長い15分間が過ぎてゆく。

試合終了の3分前、相根と藤井と前田と市原のエンジンがフル回転になりつつあるところで日本がタイムアウトを取ったが、その直後市原から藤井へのパスがあわやゴールに。そしてそのすぐ後、前田からの浮き球をイランのエリア内で振り向きざまにシュートした市原がついに日本の2点目を決める。

ファウル無しで日本を止められないイランが六つめの反則で「ダブルPK」を与えるが、前田のシュートが弱すぎてブロックされる。それでも終了間際に速攻をかけた藤井に合わせられた前田が至近距離から価値ある3点目を入れた。スコアは5−3でイランのプレート優勝だが、2000年のアジア・フットサル選手権でイランがウズベキスタンを6−4で破った以来、5−3というのはアジア勢の中では、これまでイランを相手にベスト・スコアと言えるし、成長著しい日本の急激な伸びを多く物語る数字でもある。


写真:Allsport/Stanley Chou
シャムサエさえ封じられたらという狙いもあったが、大きな動きが意外とマークしにくい。

さて、‘01年のタイガー5sの最後の試合である。宿命のライバル同士スペインxブラジルの直接対決で、勝った方がタイガー5sのカップをものにするだけでなく、真の世界チャンピオンを名乗る権利を手に入れる一戦だ。

この大会における両チームのこれまでの戦い振りを見た限りでは、世界王者を奪還したいブラジルの燃える気持ちと新たに強化された守備体勢が印象的で、どう見ても主力選手を何人か欠いているスペインのせせこましさを上回ると思わざるを得ない。蓋を開けてみても実際のプレーもそうであった。

ブラジルの気迫溢れる攻めにスペインが苦しみながら何とか耐えていたが、開始10分にフィニーニョの強引な持ち込みから受けたパスをアンドレがゴールラインからキーパーと交錯ぎりぎりに詰めたマルキーニョに当てたら、ゴール!緊張の糸が切れたせいか、2分後にもマイキーとのポストプレーでワンツーしたトビアスが放った弾丸シュートはバーの内側をかすめてブラジルの2点目になる。4分が経つと、味方がヘッディングしたボールをスペインのGKがエリアから出てクリアしようとしたら、ファルコンが先にヘッディングで無人のゴールに入れた。


写真:Allsport/Stanley Chou
立ち上がりからスペインがブラジルを牽制する中で、ダニエルがマイキーを仕事させない。

前半16分であっさり3点のリードを奪うブラジルはライバルのスペインに侮辱的な大勝利のお膳立てをこのようにできた。しかし、である。

昨年の世界選手権のファイナルもそうだったように、ブラジルは反則を犯しすぎるという悪い癖にまた呪われた。六つ目のファウルが呼んだダブルPKをスペインのハビ・ロドリゲスが決めたのは、グアテマラの決勝戦においてブラジルへの致命傷だったが、前半19分にはトビアスの手に偶然当たったボールがハンドと判定され、ロドリゲスが10メートルのポイントから決めて、スコアを1−3となった。

そのダブルPKで勢いづいたのか、後半戦にスペインの底力がじわじわと生きてきた。世界一華やかで厳しいプロリーグがスペインの強さの源のひとつだろうが、もうひとつは9年間代表の育成・指導を一手に引き受けているハビエル・ロサノという優れた監督の確固たるリーダーシップによるところが大だ。


写真:Allsport/Stanley Chou
トビアスのシュートをブロックするフリオ。

そしてこの日、ハーフタイムを利用して作戦盤を使いながらゲーム・プランを修正したロサノがどうやらスペインの選手を蘇らせたようだ。早速24分に後ろから大胆に上がり、3人目の動きをしたコベタが好調のダニエルからロング・ボールを受けてスペインの2点目を叩き込んだ。

1点差に詰め寄ったスペインが試合を振り出しに戻したのは、31分のセットプレーだ。スペインの追い上げで怖気づいていたブラジルの選手がファウルを連発する中で、速攻を仕掛けようとしたコベタをマイキーが無理やりに倒した。続くFKで強烈な右足で有名なフリオが味方からのボールをダイレクトで打ったら、DFのエウレルの股を通ってゴールインした。

ここからの勝負は熾烈を極めるものだったが、死に物狂いのブラジルの中でもトリッキーな技を次々と披露するファルコンは酔いしれる観衆から感嘆のため息を度々誘った。


写真:Allsport/Stanley Chou
フィニーニョにマークされながら浮き球を処理するダニエルは、この日好調だった。

が、スコアがタイのまま40分が経ち、試合が延長戦に入った。去年の世界選手権で40試合が行われても引き分けも延長も一度もなかったのに、タイガー5sの決勝戦は違った。延長に入ってもファウルカウントがそのままになるから、5回も反則しているブラジルはもうがけっぷちに立たされているようなものなので、トビアスとフィニーニョは「これ以上若造に任せられるか」といわばかりの猛攻に踏み切った。しかし、互いに限りなくゴールに近いチャンスに恵まれても同点のスコアが変わらずに終了のブザーを迎えた。さぁPK合戦だ。

PK戦の場合にはどっちが有利だろう、と改めて考えてもフットサルではPK戦というのはそんなにないから、勝負の行方がますます分からなくなった。

先攻のスペインの主将バビ・サンチェスが落ち着いて決めた後、なんとブラジルのトビアスの左よりのシュートはスペインのキーパー、ルイス・アマドに弾かれた。あれだけの努力を惜しまずに戦ったトビアスが、と目を疑った我々はただただ言葉を失った。

ところが、スペインの喜びは束の間で、次に真正面を狙ったキッカーのコベタもブラジルのフランクリンにシュートが跳ね返された。しかも、ブラジルのタトゥーが次に決めたのでPK戦が振り出しに。

次の4人が全員ゴールインしたため、キッカーはいよいよ5人目に入った。スペインはスペシャリストのハビ・ロドリゲスなので、ハビは文句無し決めると、ブラジルのラストは世界一の左足の持ち主フィニーニョ。その左足が放ったシュートは確かに威力十分だったが、狙いがやや高すぎたためバーをかすめていったボールは観客席に消えたまま、スペインの勝ちで試合がやっと終わった。


写真:Allsport/Stanley Chou
無常にもフィニーニョのPKがバーに当たって遠くへ飛んでいってしまった。

スペインの初の世界一で幕が閉じた一年前のグアテマラ、やはりマグレではなかった。スペインのベスト・メンバーが揃っていなかったこと、そしてブラジルは監督がフェレッチに変わってディフェンスが十分すぎるぐらい堅くてトビアスとフィニーニョがあまりにも真剣だったことを考えると、今回のタイガー5sの結果がいかに時代の移り変わりを色濃く表現したものに思える。そしてタイがオランダに突きつけた挑戦状、日本の台頭、そして何よりタイガー5sが隔年ではなく毎年行われるというニュースなどなど・・・

全てを総合すると、今年のタイガー5sは、なんだかフットサル新時代を呼び、ひとつの節目となった気がしてならない。


写真:Allsport/Stanley Chou
優勝したスペインチーム

(ご愛読ありがとうございました!)
<前へ
Tiger5sトップ