3月4日
朝から海辺の町、サントスへ、『サントス国際親善フットサルカップ』出場のために大型バスで遠征だ。エンジョイプレーヤーとしては、選手気分が少しだけ味わえるバスでの遠征に、悪い気はしない。とはいえ、山を越えて行く途中、断崖絶壁にある橋を渡るときは、異国の心細さを感じないわけにはいかなかった。なんか、ずいぶん簡単な橋なんだよね。
 サントスFCに到着。周囲はのどかな地方都市といった風情だ。 |
最初のゲームは、慶應vsVILA SOUZA。慶應10番の草野が先制ゴール! 途中で崩れて大量点を食らいながら、終盤で、なんと鳥取からツアーに参加した19歳の本田(所属チームは『サキューン』・・・ってほんとの話?)が決め、結果は2対12。
次はREGATAS SANTISTA BORDONvs天竜選抜。立ち上がりにいきなりキーパー強襲のシュートを決められてしまう。後半はキックオフからのオプションで岩本が叩き込んだり、関がスピードを生かして流し込んだりと、天竜はかなり食い下がり、緊迫したゲームとなる。こうなると私としては、出番がなくなる心配がでてくるんだよね。実際、守備が崩され始めた終盤まで出番なし。「行け」と言われたときには、マンツーマンでつけ、との、監督マリオさんの指示。しかしピッチ上には、思い切りよくボールを突っつきに行けない自分がいた。ブラジルの選手はたいていどんな局面でも、相手DFが飛び込んでくるのを待っている。わかってはいるのだが、そこで振られたときに追いつく自信がなかったために、マークがゆるくなってしまった。この辺は課題だ。つくときは味方を信じてきちんと間合いをつめなければ、ディフェンスの戦術など到底実現できない。
試合のほうは後半途中から崩されて、3対6の負け。このゲームは惜しかった。

試合終了後の列から離れて、相手選手に無理矢理ポーズをとらせる筆者。
(撮影/金山選手) |
試合終了後、控え室の片隅にひとりでしゃがみこみ、頭を抱えて肩を震わせるキーパーの渡辺良太選手(プレデター)の姿を見た。試合の立ち上がりに股下を抜かれたのが、よほど悔しかったのか。「俺はなんのためにブラジルまで来たんだ!」という気持ちだったのかもしれない。いずれにしろ、美しい姿だと思った。これも、いつもすばらしいとは到底言えない「青春」というものの、ひとつの側面には違いないのだ。
歳をとるにしたがい、生きぬくためのある種の「ずるさ」によって、「悔しい」という感情から徐々に遠のきつつある自分がいるのは気づいていた。いわゆる「楽しく」フットサルに興じるという態度も、そうしたずるさに起因するのかもしれない。しかし、悔しさを忘れたらそこで終わりだ、もちこたえ、傷つくのが辛くても、それを忘れたら終わりだ・・・渡辺選手の背中を見て、そんな気持ちになった。
近くのクラブハウスにて昼食。通訳のアウベルトに、最近のブラジル経済や日本とブラジルの交流&ビジネスについて話をきく。アウベルトはインテリジェントでかつフランクな人柄なので、話がわかりやすい。ブラジルはインフレで最悪の時期を脱し、4パーセント成長も見込めるというなかなかの水準に達していること、カルドーゾ大統領は真面目でよく働く政治家だ、日本とブラジルとは地理的にも文化的にも正反対だから、交流をもてばお互いを相補うことができるはずだ、など、興味深い話を聞くことができた。
そうこうするうちに、やたら臨場感のある歌声が聞こえてきた。レストランの裏で、ほんとうに男達の集団が、宴会のノリで歌いだしたのだ。タンバリンとボンゴみたいな太鼓を手渡しながら、手拍子でサンバのリズムを刻み、即興的にソロをとりながらみんなで歌う。ブラジル人はみんな、こんなに音楽がうまいのだろうか? 考えてみると、月並みな感想かもしれないが、ブラジルのフットサル選手のフットワークはサンバそのものだ。こまかいステップをふみながら、複数のオプションをちらつかせるのが、彼らのやり方なのだ。「カックイー!」とは思うものの、私が突然プレイ中にサンバのステップを踏み始めたら、滑稽の極みだろう。なんでも真似をすればいいというものでもない。

宴席に混ぜてもらって、ビールなどを振舞われる。
筆者(中央白シャツ)の手拍子の形が、
なんとなくもみ手風になっているのはご愛嬌。 |
夕方からはパウメイラスとアルカンの試合ののち、カスカベウvsサントスFC(ジュニオール)だ。おっとそのまえに、会場外でBANFF SPORTSの櫻井社長とマリオさんがなにやら密談・・・。なんと、BANFFでサンパウロの10番(すいません、名前を失念してしまいました)を日本に呼ぶ相談だとのこと。

左からサンパウロ10番、安光氏、櫻井氏。
やけにがっちり肩を組んでいるところを見ると、
かなり信憑性のある話のようだ。 |
カスカベウは、今日も金山が好調だ。彼が縦に抜けることで、中央に使えるスペースが生まれていた。後方でのつなぎにも参加し、チームとの相性はいいようだ。相根、市原、前田の3人衆はやはりうまい。若いチーム相手とは言え、彼らは十分通用している。後半10分には逆転に成功し、マリオさんもヒートアップ! 顔をくしゃくしゃにして指示を出している。
 ようやく第2PKを決めた前田。 |
 終盤では市原をキーパーにおいて、パワープレイも試みるカスカベウ。 |
結果は、金山の2点と前田の1点で3対6。やはりシュートが打ち切れていないことが、勝敗を分けている気がする。日本チャンピオンには、ぜひがんばってブラジルでの「勝ち」をもぎ取ってもらいたいものだ。
夜、バスでの帰り途中に(ようやく)サントスの海岸に立ち寄ることになった。昼間は誰も海に行こうとしなかった。「リゾートに来たんじゃない。フットサルを学びに来たんだ」とばかりにみな、試合を観戦していた。すごい気合だな。「海行こう」ってうろついてたの、俺だけだったよ。
サントスの海岸はデカい。とてつもなくデカかった。世界一長い砂浜としてギネスブックに載っているらしい。アウベルトによると、地盤が弱いせいで斜めに傾いているビルが、海岸からいくつか見えるのも名物のようだ。確かに、あからさまに傾いている。ピサの斜塔どころのさわぎではない。危なっかしい名物もあったものだ。
危なっかしい名物といえば、当然のことながら、キワどいビキニを着たギャル(ほかに言い方ないのかな)には、時間が遅くてお目にかかれなかった。アウベルトがビールのおつまみに、といって買ってくれた"ブラジル版枝豆"(ソラマメの一種を塩味でゆでたもの)がうまかった。
(続く。次回こそ最終回、のはず) |