文・スティーブ=ハリス●日本フットサル連盟常任理事
sharris@asij.ac.jp

最新号
前へ 第4回 次へ

バレンシアの必死の逆襲

プラヤス・デ・カステヨンが欧州クラブ選手権でロシアのディナ・モスクワをホームで破り、ヨーロッパ優勝の喜びを地元のファンとカステヨン市の大広場(Plaza Mayor)で分かち合ったのは、ほんの2ヶ月前だった。そして、バレンシアとの三戦目が行われる今日、新聞には「みんなでPlaza Mayorに行こう!」という見出しの大きな記事が載り、それが余分に刷られ山積みにされ、Ciutat de Castello の入り口にも置いてあった。プラヤスが簡単にバレンシアを片付けて、市民と共にリーグ優勝に陶酔する日が来た。なんといったって昨年は敵地での優勝だったので今度こそ地元で、という希望が強かった。

シリーズの最終戦と思って駆けつけたのは、スペイン代表監督のハビエル・ロサノ(一番右)。その左が筆者で、左から2番目がLNFSの会長に新しく就任したアントニオ・フランコ。一番左が筆者の友人ペドロ・コネヘロ。

しかし、前回の後半戦で見せたように、バレンシアはカウンターやスローという必殺の武器を持っているだけでなく、逆境に立たされて初めて底力を出せる非常に前向きで若いチームだということをカステヨンの市民が気づいていただろうか。少なくともころりと負けてくれる相手じゃないことは確かだ。

それにしても Ciutat de Castello が燃えていた。目前にある優勝という二文字を会場のサポーターの誰もがありありと意識していた。もし不利な状況を有利にするというバレンシア独特の気質が本当に存在するのであればそれを発揮できる絶好の舞台がここで見事に用意されていた。立ち上がり10分の雰囲気とプラヤスの圧力があまりにも圧倒的だったからだ。

レベルの高いフットサルを生で観ると、特に印象的なのは、選手の球際に強いこと、パスの早さと正確さ、シュートのパワー、それから足技の鮮やかさといったところだが、やはりスペインで活躍する選手が一流中の一流なので、この辺がほかと比べても桁外れで、見応えも次元が違う。ことにプラヤスは、役者が一枚上だから、サンチェスが力強くトップを張ったピボット、ロドリゲズの突破、ロレンテの考え抜いたパス出しのタイミングなど、観る者がまさに酔えるフットサルである。

ワールド・クラスのpivotであるハビ・サンチェスを真剣にマークするのが、バレンシアの新星ホセマ。千両役者同士のマッチアップは見応え充分だった。

それにしても、バレンシアがまたしても粘っこく辛抱して守備でちゃんとケアできていたし、GKのラファも自信たっぷりにシュートをことごとく阻んでいた。それに、あと数ミリでプラヤスのゴールに吸い込まれるスローからのボレー・シュートがあったり、ホームのプラヤスが押していてもどう見ても流れがバレンシアにあった。

ハーフタイム5分前に、プラヤスのキーパーの正面でバレンシアのアルベルトがどんぴしゃりのタイミングでスローからのヘッディングを決め、バレンシアがリード。ほんの数分後、得意のカウンターでバレンシアが2−0で折り返し、後半にもホセマの突破からフェデが駄目押しの三点目を入れた。楽勝のはずが、気づいたらプラヤスが派手にやられていた。

4分しか試合の残り時間がないので、ペレス監督がハビ・ロドリゲズにキーパーのジャージーを着せて、プラヤスがパワープレーに出た。しかし、今年のルール改正でパワープレーがやっとできるようになったLNFSでは、この戦術は散々たる結果しか生んでいないし、この試合のパワープレーも例外ではなかった。簡単にボールを取られたプラヤスが立て続けにホセマとテテに無人のゴールに得点され、自ら何とか3点を取ったものの、試合終了のホイッスルが鳴った時には、3対7で負けた。パワープレー中に何と4点も入れらる無様な作戦失敗であった。

無人のゴールにバレンシアの5点目を入れたテテは歓喜に浸る。6度目の挑戦でやっと王者のプラヤスを倒したという実感が湧いた瞬間。

金星を上げ、シリーズを1−2にさせたバレンシアのご褒美としてはホームに戻ることになったが、絶頂に達する喜びと裏腹に、フィジカル面においてはチーム状態はもうボロボロ。チームいち一のテクニシャンのジェリーの次回出場が絶望的で、カウンターで俊足を活かすフェデも負傷し、4戦目が微妙。これでスタメン級のフィールド・プレーヤーが6名になりそうなので、いくら地元の利があってもバレンシア・ビフサが限界に来ていたのは、もう否めない事実だった。
前へ 第4回
次回へつづく・・・