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Fリーグ2007・第19節レポート「湘南」vs「名古屋」

【第19節:2月3日(日)開催 (小田原アリーナ)】
<湘南ベルマーレ vs 名古屋オーシャンズ>
 (文:北健一郎、写真:M.Minagi)

湘南ベルマーレ 1-1 名古屋オーシャンズ
0-4
1-5



 この試合で優勝を決めたい名古屋は控え選手のユニを手に


 絶対にホームでの名古屋の優勝を阻止したい湘南




2008年2月3日14時22分、小田原アリーナでFリーグ初代王者が誕生した。

8チームで唯一のプロクラブ・名古屋が2試合を残した時点で優勝を決めたのだ。

引き分け以上で名古屋の優勝が決まるという状況で迎えた湘南戦。小田原アリーナには「目前優勝阻止」などの横断幕が掲げられている。

名古屋のスタメンはGK定永久男、鈴木隆二、完山徹一、丸山哲平、森岡薫。ケガで2試合メンバーから外れていた北原亘も、ベンチスタートながらメンバー入り。

一方、目の前での優勝と6連敗は何としても避けたい湘南のスタメンは、GK阿久津貴志、大地悟、篠崎隆樹、荻窪孝、伊久間洋輔。

2分、早速名古屋が先制点を手に入れる。ピヴォの位置で丸山の縦パスを受けた森岡が左側にターンしてシュート。

利き足ではない左足で打ったシュートだったが、これが決まって名古屋が1-0とリード。 16節の大分戦で10得点、17節の花巻戦で12得点と2試合連続でFリーグの最多得点記録を塗り替えている名古屋。この1点が呼び水となり、湘南相手にゴールラッシュとなるかとい思われたが・・・・・・その後の名古屋はピリッとしない。

開始10分までに2度も4秒ルールからキックインを相手に渡してしまう。

優勝が決まる試合ということで緊張もあったのかもしれない。

館山マリオ監督は「ちょっと緩んでいた」といっていたそうだが、どちらにしても、これだけスキのある名古屋も珍しい。

名古屋がセカンドセットに変わった5分、湘南がカウンターをお見舞いする。伊久間が右サイドをドリブルで持ち上がり、左サイドを併走していた荻窪の前のスペースへパス。だが、荻窪は左足でしっかりミートできず、ボールは右外へ。

8分には、沖村リカルドからのパスを左サイドから関新がシュート。これはGK定永がセーブ。この直後にはマルキーニョスのドリブルを止めた沖村が1人でゴール前まで運んでシュート。だが、これも定永に止められてしまう。

湘南は3-1のゾーンディフェンスがハマっていた。前半の名古屋はポジションチェンジが少なく、マークをつかまえるのが比較的容易だったからだ。2分に森岡に決められたような、「個の力」でやられる以外は失点シーンは想像しにくかった。

それだけに、ボールカットしてからのカウンターはしっかり決めるべきだった。定永の飛び出しのタイミングがうまかったこともあるが、ゴール前で打ち急いでいるのが気になった。5連敗中のチームには「焦り」が感じられた。

 

だが、ただ一人落ち着いている選手がいた。篠崎である。湘南の最近4試合の6得点はすべてこの男が叩き出したもの。この日も湘南のゴールを決めたのは篠崎だった。

13分、近藤純也の縦パスを大地がワンタッチで左へ流すと、角度の厳しいところから篠崎が定永の股を狙ってシュート。湘南らしいコンビネーションと篠崎の落ち着きが光った。

小田原アリーナには「いけるかもしれない」という空気が漂う。 前半の名古屋の出来からみて、逆転は十分可能だったと思う。15分の豊島明が左から中へカットインしたシュートの後には、たまらず名古屋がタイムアウトを取ったほどだ。

残り10秒、豊島と関のパス交換から右の伊久間へサイドチェンジ。"どフリー"だったが、このシュートは枠にすらいかなかった。前半終了のブザーが鳴った時点で、湘南の勝利は厳しくなった。

名古屋にハーフタイムという立て直しの時間を与えてしまったからだ。 後半が始まって5分。名古屋が勝ち越し点を決める。決めたのはまたしても森岡。中央やや左寄りの位置から目の前の敵をちょっとズラして右足でズドン。このシュートは阿久津が上に伸ばした手の間を目にも止まらぬスピードで通り過ぎてゴールネットに突き刺さった。


  その決定力は増すばかりの名古屋・森岡

今の湘南は"20分間のチーム"である。前半はいい内容のフットサルができていても、後半までそれを維持できない。現在の5連敗の要因は「決定力不足」と共に、40分のゲーム運びができていないことも大きいと思う。

30分には、沖村のシザーズをマルキーニョスがカット。そのまま左サイドをドリブルで持ち込まれシュート。これは阿久津がセーブしたものの、ポストに跳ね返ったボールにボラがつめて3点目。

これで"切れて"しまった湘南は、33分にも森岡が中へ軽く切れ込んでクロスにパス。敵の視野の裏側から入ってきた完山が左足で合わせて、決定的な3点差とする。 湘南は大地をGKにしてパワープレーを開始するも、37分にがら空きのゴールにマルキーニョスにロングシュートを沈められて傷口を広げる結果に。

 名古屋を支えた助っ人・ボラとマルキーニョス

 決定的な5点目に湘南は呆然

ピッチの中央付近で?マルキーニョスがボールをキープしているところで、デジタイマーの時計が「0」に変わる。名古屋が敵地でFリーグ優勝を決めた。 試合後の名古屋の選手たちの表情に浮かんでいたというのは「ホッとした」という安堵感だった。唯一のプロクラブとして「優勝は当然」というプレッシャーは相当なものだったはずだ。


 目前で優勝を決められた湘南は肩を落とす

2節終了後の電撃的な監督交代を乗り越えて、名古屋は一回り大きなチームになった。このFリーグの優勝も彼らにとっては通過点でしかない。「アジア、世界を目指したい」と櫻井嘉人GM。世界を目指すクラブ・名古屋がFリーグの歴史にその名を刻んだ。

 

Fリーグ2007・第17節レポート「浦安」vs「神戸」

【第17節:1月20日(日)開催 (浦安市総合体育館)】
<バルドラール浦安 vs デウソン神戸>
 (文・写真:北健一郎)

バルドラール浦安 1-0 デウソン神戸
0-1
1-1



 もう絶対に負けられないバルドラール浦安


 まさにFリーグ台風の目となったデウソン神戸


肉弾戦の末の"痛み分け"

優勝に一縷の望みをかける2位の浦安と、4位以下との勝点差がつまってきた3位・神戸の上位対決は、激しい肉弾戦の末に"痛み分け"のドローとなった。

浦安にとっては痛すぎる引き分けだ。名古屋が大分に10-1(!)で勝ったため、勝点差は7に開いて、これで優勝の可能性はほぼ消滅。一方の神戸にとっては、2位チームを相手に勝点1を上積みできたことは、ポジティブな要素が大きいだろう

ここまでの戦績は、神戸ホームの2節は浦安が3-2で勝利、長野セントラルの12節はスコアレスドロー。浦安が1勝1分けで勝ち越してはいるが、試合内容を見る限りはどっちに転んでもおかしくなかった。ここから一つの引き分けも許されない浦安にとって神戸は、厄介この上ない相手だ。

スターターは、浦安がGK川原永光、平塚雅史、清水誠、岩本昌樹、高橋健介。神戸はGK村山竜三、ハタケヤマ・ブルノ・タカシ(ブルノ)、伊藤雅範、小川亮、原田浩平。

キックオフから数分見て感じたのは、神戸の選手の体が重たそうだな、ということ。特にブルノと原田の突破に、いつものようなキレが感じられない。それについて原田は「バス(に乗っている時間)が長かった」ことを理由の一つに挙げた。神戸のアウエー遠征時の移動手段は基本的にバス。しかも、到着したのが前日の夜遅くだったのだという。"移動疲れ"が体に残っていたのは想像に難くない。

浦安のディフェンスが神戸の攻撃の軸となる2人を相当警戒していたことも大きい。

浦安の警戒心が顕著に現れたのが、原田が得意な左サイドでボールを持ったとき。必ずアプローチ役とカバーリング役の2人をつけて、タッチライン際に追い込み、得点率の最も高いカットイン→右足シュートの選択肢を消す。仮に縦に突破にかかってきた場合でもシュートコースはニアに限定される。これに関しては川原が責任を持って止める。

とはいえ、原田とブルノにマークが集中するということは、他の選手がフリーになるということでもある。しかし、神戸は他のポジションでの数的優位をうまく使えなかった。このチームの場合は"勝負すべき選手"がボールを持ったときは、ドリブルするスペースを消さないように、あまり近づき過ぎないのが約束事になっている。彼らの突破力を前提にしたこのやり方は、ドリブル勝負で勝てないと成立しない。

伊藤が「攻撃が単調だったかもしれない」と語ったように、この日の神戸の攻撃は止まった渋滞からのものが多く、変化に欠けた感は否めない。

とはいえ、浦安が完璧に止められていたかといえばそうではない。実際、4分には右サイドで抜け出しかけた伊藤を引っ掛けた平塚に、11分には原田へのスライディングで小宮山友祐に、「黄色い紙」が提示されている。この2つのプレーに対しては、今日の試合で審判を引退する鈴木亮哉審判からレッドカードを出てもおかしくなった。

 

試合開始直後から、何となく不穏な空気が漂っていたが、原田へのファウルに激昂した伊藤が小宮山に詰め寄り、一触即発になるシーンも。

18分、神戸は田中智基に警告。その直後、藤井健太とのワンツーで抜け出した稲葉洸太郎をペナルティーエリアの中で引っ掛けたのは、またしても田中。これには当然2枚目のカードが出て、前回の対戦に引き続き神戸に退場者が出る。

PK。浦安にとっては先制のチャンスだ。だが、キッカー稲田祐介のシュートは左に飛んだ村山が読みきって止める!

前回は神戸がFP3人になって数的有利の時間帯に決められず、それがドローの大きな要因となった浦安。今回はその体験を教訓に、ボール回しにあまり時間を使わず、ブロックの外からでもシュートをどんどん打っていった。それが実ったのが前半残り54秒、稲葉がペナルティーエリアの外からミドルシュートを突き刺した。

後半、「2点目が決まれば試合は終わると思っていた」(シト監督)浦安は、後半の4分過ぎから小宮山、藤井、稲葉、稲田のセットで11分までプレー。ここで決めたいところだったが、稲田が神戸の山元に厳しくマークされたこともあって、突き放すことはできず。

このセットが代わったところで、浦安は「1点を守りきる」モードに切り替えた。小宮山、市原を中心に、神戸の攻撃を跳ね返していく。神戸としても後半10分から入ったスタメンセットで追いつきたかったが、点を取れないまま16分に交代する。これから先の時間でブルノや原田を使えるとしても1、2分。神戸は苦しくなった――。

だが、神戸のセカンドセットは大仕事をやってのける。37分、退場した田中に代わってセットに組み込まれた廣瀬裕貴が中央でパスカット。そのまま持ち上がり、右前方の脇真太郎へ出す。脇は「何となく、GKの体重が(ファーサイドへ)傾いているような気がして」川原の左脇の下=ニアへシュート。これがゴールネットを揺らし、試合は再び振り出しに戻る。

浦安はすぐさまパワープレーを開始。だが、「4分ぐらいあれば、回して、回してってできるんだけど......。残り時間が短すぎた」とパワープレーのGK岩本が語るように、浦安は焦りからプレーが雑になってしまう。

前節で大阪に4点差で勝っていながら、パワープレーから一時ひっくり返された神戸のディフェンスだったが、今日は同点だったこともあり選手の集中力はしっかり保たれていた(相変わらず守り方は危なっかしかったが)。

残り1秒。稲田の左サイドからのキックインを藤井がシュートするが無常にもボールはゴールの左へ外れる。タイムアップのブザーが鳴り響く。浦安にとってはいろいろな意味で「終わり」を告げるブザーだった。何人かの選手の目は赤くなっているようにも見える。

試合後、シト監督は「優勝は非常に難しくなった」と事実上の"白旗宣言"をした。監督交代に揺れる名古屋を尻目に序盤戦は首位を走った浦安。一時は名古屋と勝点差5をつけたが、長野セントラルでの2引き分けと、北九州セントラルで名古屋との直接対決で敗れたことが決定打となった。

「名古屋と他のチームでは、環境面で非常に差がある状況。仮にリーグが9月まで続いたとしても、その差は広がる一方だろう」。シト監督は最近の会見のお約束となっている、プロとアマの差について語った。ここまで"勝負師"シト監督の手腕と経験豊富な選手の力で、内容的にはよくない試合もモノにしてきた浦安だったが、ここに来て力尽きた感じだ。

次節で浦安が大阪に負けた場合、名古屋が花巻に勝てば、名古屋の優勝が決まる。

Fリーグ2007・最終節間近・座談企画 第6回



【Fリーグ2007・最終節間近・座談企画】


【第6回】
「Fvs地域」の全日本選手権

●座談会参加メンバー:
菊地芳樹氏(ストライカーDX)、橋爪充(フットサルLife)、北健一郎氏(ストライカーDX)
(以下全て敬称を略しています)

昨年の9月23日に開幕した、日本史上初のフットサル全国リーグ「Fリーグ」。
3巡するリーグ戦も2巡を終了した。(座談会開催時点)
優勝戦線も大詰めになり、なんだかんだ言ってもかなり絞られてきた感もある。

そこで今回は、ピッチ上で繰り広げられる「Fリーグ」の試合そのものについて、
そして、ホームアンドアウェイというフットサル史上初の厳しい環境での試合、地方でのセントラル開催という試みといったピッチ外での出来事などについて、深く深く語っていただいた。

 


フットサルネット では、もうすぐ始まる全日本選手権のことなんかも
話しておきましょうか。

Fリーグの8チームは本大会からの出場になります。

橋爪 全日本選手権の予選を取材してチームに話を聞くと、
全日本に出たいということよりも、Fリーグのチームと戦いたい、
倒したいということをみんないうんですよ。

Fリーグというトップリーグができたことによって、そういう対立概念が
できて見どころが増えましたね。

  去年はAMV(花巻の前身)とエスペランサ(大分の前身)が
グループリーグ敗退していろいろといわれましたけど、
今年も同じことが起こる可能性はある。

それは花巻や大分に限らず。

個人的には別に驚くことでもないと思う。

1年間でそこまで圧倒的な差がつくほうがおかしいというか。

菊地 地域リーグを見れていないので、
チームの実力的なものはわからないというのが前提で話すんだけど。

Fリーグのチームが「ゲーム体力」がついていて、
意外と強くなっているという可能性は考えておいたほうがいい。

フットサルネット そうですね。

菊地 "波乱"を期待して見ている人たちが、
「あれ、意外とFのチームって強いじゃん。面白くないな」みたいな(笑)。

フットサルネット 関東を勝ち上がってくるチームとFリーグの
下位のチームの力関係はどうなんでしょう。

  ピッチでの実力的には互角かもしくは関東のほうが
上かもしれないですよね。

でも、関東のチームって、全日本選手権が関西でもやるようになってから
割とポロポロ負けているじゃないですか。

実力的には関東のチームが上だと思われている場合でも。

それは"アウエー"でプレーする経験の乏しさも
関係しているんじゃないかなと。

そういう点で言えばFリーグのチームはアウエーでもセントラルでも
遠征試合をたくさんこなしている。

普段のアウエーの試合に比べれば、
準備期間のある全日本は全然問題ないでしょうし、
そこは有利に働くはず。

菊地 選手もそうだし、面倒を見るスタッフも慣れているのは大きい。

しかも今回は、高知という未知の場所での開催もある。

  純粋な競技力では地域チームが上だとしても、
そういったところも含めた「チーム力」ではFのチームが上
ということになるかもしれない。

フットサルネット 高知に降り立ったときの
チーム力がビヨーンと差がつくかもしれないと(笑)。

菊地 Jリーグやプロ野球では、アウエーのチームが
おかしくなっちゃうというのはそんなに感じないんだけど、
フットサルではそういう影響が結構あるからね。

橋爪 開幕前にある人がこういうことをいってたんです。

花巻や大分は下馬評も低いし、たくさん負けるかもしれない。

でも、1年が終わったときには、Fリーグで戦ったチームと地域リーグで
戦ったチームとでは天と地ほどの差が開いてしまうだろうと。

本当にそうなっているのかが、この全日本選手権で見れそうですね。

フットサルネット Fリーグと共に全日本選手権も楽しみにしましょう。

今日はどうもありがとうございました。

Fリーグ2007・最終節間近・座談企画 第5回



【Fリーグ2007・最終節間近・座談企画】


【第5回】
日本フットサルは進化している?

●座談会参加メンバー:
菊地芳樹氏(ストライカーDX)、橋爪充(フットサルLife)、北健一郎氏(ストライカーDX)
(以下全て敬称を略しています)

昨年の9月23日に開幕した、日本史上初のフットサル全国リーグ「Fリーグ」。
3巡するリーグ戦も2巡を終了した。(座談会開催時点)
優勝戦線も大詰めになり、なんだかんだ言ってもかなり絞られてきた感もある。

そこで今回は、ピッチ上で繰り広げられる「Fリーグ」の試合そのものについて、
そして、ホームアンドアウェイというフットサル史上初の厳しい環境での試合、地方でのセントラル開催という試みといったピッチ外での出来事などについて、深く深く語っていただいた。

 


橋爪 市原さんが長野で2試合戦った後の記者会見で
「僕たちがフットサルの魅力を伝えられたかは、正直自信がありません」
っていってたじゃないですか。

僕はあの言葉がすごく印象的で。選手側はフットサルの普及について
すごく考えているんだなと感じました。

菊地 ただ、「一部」というと語弊があるかもしれないけど、
そこまで考えている選手というのは限られるんじゃないかな。

フットサルネット これまでの日本のフットサルを作ってきた人たちと
いうことですよね。

  浦安の市原さん、(藤井)健太さん、町田の甲斐(修侍)さん、
(金山)友紀さん、湘南の豊島(明)さん......。

フットサルネット 彼らは「自分たちで作ってきている」
という意識がすごく強いですよね。

  それこそ、健太さんや市原さんが講師になって、
神戸や大分の選手に日本フットサルの歴史についての講義を
したらいいのでは(笑)。

まあ、それは冗談としても、そういう意識をクラブ・選手に持って
欲しいなとは思います。

こちら側の過剰な期待なのかもしれませんけど。

フットサルネット これまで作ってきたものが一つの
「ステップ」としてあって、今はそれを上りきって新しい踊り場に
立っているところ。

次の「ステップ」を今の若い世代と作っていくことになるんでしょう。

  そうですね。

菊地 とりあえず1年目はこういう形だったというのがあって、
2年目以降でいいところは伸ばして、悪いところは良くして、
ということになっていくんじゃないかな。

始まる前には、誰もどういう風になるのかなんて
予測できなかったわけだし。

橋爪 個人的には、これまでは無料でセントラル開催のような
感じでやって、300人とか400人しか集まらなかったものが、
有料開催で今日にしても3500人とかが来ているっていうのは、
物事の進化の仕方としては相当いい線いっているんじゃないかと。。

フットサルネット しかも、今日は雨の中の3500人ですからね。

橋爪 そういう意味で、日本フットサルはここまでずっと下がることなく、
前に進んできているといえるんじゃないですか?

フットサルネット 確かに強烈な"後退感"というのは
感じたことがないですね。

ただ、逆にというと、みんなあんまりビジョンや目標もなくやってきた
というところもありますよね。

純粋に競技の面白さに引きつけられてきたというか。

  それでも、「後退」しそうなポイントはあったと思うんです。

2004年のマカオの世界選手権予選(アジア選手権)のときは、
みんなが「これで世界選手権に出られなかったら、
日本のフットサルは終わっちゃう」といっていた。

そういうところを乗り越えて、結果を出してきたのは
大きいんじゃないですか。

アジア選手権で優勝してアジアナンバーワンになったり、
そういうことがFリーグ開幕の促進に間違いなくつながって
いると思います。

菊地 確かに僕もそう思う。

ただ、3500人が集まったとしても、もうちょっと人数的に
膨らんでいかないとお金的に回らないというのは現実としてはあって。

当面の各チームの目標は「回す」ということになるだろうから。

ただ、何のベースもないところから始めて、これだけの規模のリーグが
何とかやれているというのは素直にすごいと思う。

フットサルネット 企業ベースではない、それこそ同好会が
発端となったようなクラブが集まって全国リーグでやっているというのは、
他では類を見ないことじゃないですか。

ハンドボールにしたって、バスケットボールにしたって、
全国リーグとつくものは企業チームばかり。

それが全国リーグとして立ち上げることができたのは、
やっぱりサッカー協会の後ろ盾があったからだと思うんです。

今は自分たちでお金を回す、キャッシュフローのような形は
作れていないかもしれない。

でも、いちばんすごいことは「やってしまったこと」。

菊地 やってしまって、ここまで来たっていうのはねぇ......。

フットサルネット とりあえず始まって、1年間やった
という実績はあるわけじゃないですか。

何千人集まりました、メディアにこれだけ取り上げられました、
という話はできるようになる。

その中で費用対効果としてプラスだと捉える企業が出てくれば、
プロ化するチームが増えていって――。

  リーグのレベルが高いところで拮抗していく、
というのは理想的な流れですよね。

菊地 少しずつ、少しずつ、いろいろなところが肉付けして良くなっていけばいい。

Fリーグ2007・最終節間近・座談企画 第4回



【Fリーグ2007・最終節間近・座談企画】


【第4回】
セントラル開催の難しさ

●座談会参加メンバー:
菊地芳樹氏(ストライカーDX)、橋爪充(フットサルLife)、北健一郎氏(ストライカーDX)
(以下全て敬称を略しています)

昨年の9月23日に開幕した、日本史上初のフットサル全国リーグ「Fリーグ」。
3巡するリーグ戦も2巡を終了した。(座談会開催時点)
優勝戦線も大詰めになり、なんだかんだ言ってもかなり絞られてきた感もある。

そこで今回は、ピッチ上で繰り広げられる「Fリーグ」の試合そのものについて、
そして、ホームアンドアウェイというフットサル史上初の厳しい環境での試合、地方でのセントラル開催という試みといったピッチ外での出来事などについて、深く深く語っていただいた。

 

  Fリーグを見ていて感じるのが、
観客(スタンド)の温度が上がるまでに時間がかかるな、
ということなんです。

ゴールシーンで瞬間的に盛り上がるだけで、
パワープレーできわどいシーンが連続するようになって
やっと暖まってくる、みたいな。

菊地 今日(この座談会はFリーグ第12節終了後に行われた)は
セントラルだったからじゃないかな?

ホームゲームのときはサポーターの応援に参加するとまではいかなくても、
いいプレーには拍手をしたりとか、すごくいい雰囲気があった。

もちろん試合内容が大事なのはいうまでもないけど、
それでもホーム&アウエーだったら何とかなる。

だからセントラルが難しいのかもしれない。

橋爪 勝敗の行方が早めに決してしまって、
どこを見ていいのかわからなくなる――
長野、北九州とセントラルがあったけど、
4試合中3試合ぐらいがそのパターンだったじゃないですか?

これは初めて見に来るお客さんにとっては辛いでしょう。

  もう暴言を承知でいうんですけど......。

MC解説を僕にやらせてほしい!

一同 ほう。

  今、セントラルでMCが実況するのはシュートシーンか、
ゴールが決まったときですよね?

でも、ゲームの中ではパス回しをしている時間のほうが圧倒的に長いわけで。

その間はMCの声もないし、スタンドも静かで寂しい感じがする。

パス回しをしている間のお客さんの興味をつなぐために
できることの一つとして、MCのトークの工夫があるんじゃないかって。

フットサルネット 具体的にはどんなことを喋るんですか?

  僕たちが記者席で喋ってる会話みたいな感じのイメージです。

菊地 昔話ばっかりになるんじゃない(笑)?

  この選手とこの選手は元チームメートで、とか。

誰と誰がやりあってるけど、2人は昔からライバル関係で、とか。

そういうバックグラウンドを共有できたら楽しさが広がるじゃないですか。

橋爪 マッチアップの局面が多い、というのはフットサルの魅力でもありますしね。

  そうそうそう。

町田と浦安だったら、市原(誉昭)さんがボールを持ったところに、
甲斐(修侍)さんが激しくプレスをかけにいくなんて、
昔から見ているファンにとってはたまらないシーンなわけじゃないですか。

もちろん、戦術的な話があってもいいでしょうし。

フットサルのパス回しや交代ってサッカーしか見たことのない人にとっては、
かなりわかりづらいものだから。

フットサルネット MCじゃなくても、会場内にFM電波を飛ばして
ラジオを貸し出して聴きたい人は聴くという形でもいいかもしれないですね。

菊地 まあ、ここまで見てきて思ったのは、セントラルは相当難しいということ。

いろいろな人が"ノーケア"だったよね、こういう風になっちゃうなんて
思ってもいなかったはず。

試合は盛り上がらないし、集客も結構苦しいし、イベントを組み込むのも難しい。

フットサルネット リーグ側はセントラルよりも、各クラブがホームゲームの
開催をきっちりできるかを気にしている感じがあった。

橋爪 ちゃんと7試合をまっとうできるかということですよね。

フットサルネット これまでのフットサルはずっとセントラルみたいなもの
だったじゃないですか、基本的に。

その形にファンが慣れているから入れておこうというのもあったのかもしれませんが。

菊地 各ホーム会場でのセントラルというのもアリかもしれない。

8チームだから8節分はできないけど。

フットサルネット 中国リーグ方式ですよね。

  今シーズンの関東リーグのやり方は参考になるかもしれない。

各クラブに"ホスト開催"の節が割り当てられていて、
クラブがホームゲームを演出するというやり方。

エキシビションマッチで関東リーグ所属クラブのOB戦が行われて
盛り上がったとか。そういうやり方もあるんだなって。

菊地 「ストライカーDX」の対談レポートでもいったんだけど、
セントラルはリーグに含めないで1日ないし2日完結のトーナメントに
してもいいのかもしれない。

橋爪 「スフィアリーグみたいに」っていってたことですよね。

菊地 明確な目的があるほうが、地方開催には向いていると思う。

フットサルネット とにかくセントラルをどう盛り上げるかというのは、
来シーズンのFリーグの大きな課題になりますね。

Fリーグ2007・最終節間近・座談企画 第3回



【Fリーグ2007・最終節間近・座談企画】


【第3回】
チームの総合力を決めるファクター

●座談会参加メンバー:
菊地芳樹氏(ストライカーDX)、橋爪充(フットサルLife)、北健一郎氏(ストライカーDX)
(以下全て敬称を略しています)

昨年の9月23日に開幕した、日本史上初のフットサル全国リーグ「Fリーグ」。
3巡するリーグ戦も2巡を終了した。(座談会開催時点)
優勝戦線も大詰めになり、なんだかんだ言ってもかなり絞られてきた感もある。

そこで今回は、ピッチ上で繰り広げられる「Fリーグ」の試合そのものについて、
そして、ホームアンドアウェイというフットサル史上初の厳しい環境での試合、地方でのセントラル開催という試みといったピッチ外での出来事などについて、深く深く語っていただいた。

 

フットサルネット 現在の順位はチーム力、
総合力とほぼ比例している感じになっているんですか?

  そうだと思います。

何年か前の関東リーグでブラックショーツが上のほうにいったりとか、
チームとしての環境が恵まれていなくても、
その試合の集中力で勝てていた。

でも、今はそれだけで勝ち続けるのは厳しい。

フットサルネット 本当にいろんなことの積み重ねの結果がピッチで現れているわけですねぇ。

Fリーグになったことによって、
そのファクターの数がものすごい増えている。

橋爪 花巻が名古屋にセントラル開催で0?4で敗れたっていう結果だけを見ると、
「なんだ弱いじゃん」って感じかもしれませんが、
裏を返せばあの状況の中で4点差に抑えてすごい、
ということかもしれない。

  彼らが名古屋に勝ったのはやっぱりホームに迎え入れたときだった。

どういう試合かは見ていないので詳しくわからないけど、
ホームの利点が確実にあるという証明だったと思います。

菊地 1年目でホーム&アウエーの色が出ているっていうのが、
すごく面白いことだと思う。

Jリーグと同じように、
Fリーグになるとリーグ全体を俯瞰的に見ることが難しくなてくる。

今のところ、Fリーグはセントラル開催があるから、
まだ8チームの状況を把握できているけども。

チーム単位で、それぞれの地域のコミュニティで盛り上がってください
というコンセプトがあるからこそ、チームを全国に散らしたわけじゃないですか?

今までは全日本選手権とか地域チャンピオンリーグとか、
全国大会を見ていればなんとなく全体の内容がわかってたわけじゃないですか。

これからはそういうのじゃなくなってくるから、
僕らも少し見方を変えないといけないかもしれないですね。

Jリーグが開幕した頃は各チームが平均的なまま進んだじゃないですか。

だけど、Fリーグの場合はそういうのじゃなくて、
最初から格差がある感じだったでしょ。

だって1チームだけ完全プロがあるリーグなんて、たぶんどこにもない。

どのスポーツにしても企業アマか、完全プロ。

いろんなタイプががごちゃまぜになってリーグがスタートしたのは、
かなり実験的だと思うんです。

  どこからが「プロ」かっていう定義が難しいですけど、
今の順位ってプロの人数の順位でもあるんじゃないかと。

まず1位の名古屋は全員プロですよね。

2位の浦安にしても主力級はほとんどセミプロといってもいい。

で、神戸も何気にプロ契約のような選手が7、8人いる。

逆にいうと湘南、町田はそういう選手が少ない。

菊地 神戸についていうと、このチームがここまで躍進しているのは、
やっぱりフットサルに「色」があったことだと思う。

最初は選手たちもチームのGMが「超攻撃的フットサル」を打ち出したことに対して半信半疑だったと思うんですけど、
それによって彼らの良さが引き出されて、
「自分たちは攻撃的に戦うんだ」っていうのがよりどころになっているんじゃないかな。

まあ、今日の大阪戦のパワープレーの守備みたいに穴もあるんですけど(笑)。

そういうところも含めて、神戸はリーグのMVP級の働きをしている。

フットサルネット ものすごい強そうに見えたのに、パワープレーをやられると途端に弱くなるっていう。

あれはビックリしたなあ。

菊地 それから、神戸の選手には技術があるでしょ。

2人に囲まれたりとか、イレギュラーなことが起こったときに、
自分の技術とフィジカルで解決できる。

そこがこれからのフットサルのベースになってほしいな、と。

同じ状況でも下位の方のチームって、焦って蹴っちゃったり、
無理にパスしてミスになっちゃったり、残念な感じになって、
すごくゲームの質が低く見えちゃうプレーをしてしまう。

だけど神戸の選手たちはそれが違う。

ポテンシャルの差は多少あるんだろうけど、
Fリーグにはそこまで下手な選手が集まっているわけではないんだから、
意識一つで変わると思うんですが。

  二人に囲まれた時に、そこの間をどう抜いてやろうか考えるか、
「怖い、怖い」ってなっちゃうかどうかの違いですよね。

菊地 そういう細かいところの技術が好きで、
この世界に入ってきてる選手が多いはず。

だから、もう一度その原点を思い出してプレーしてほしいな。

Fリーグ2007・最終節間近・座談企画 第2回



【Fリーグ2007・最終節間近・座談企画】


【第2回】
ロマン派の視点

●座談会参加メンバー:
菊地芳樹氏(ストライカーDX)、橋爪充(フットサルLife)、北健一郎氏(ストライカーDX)
(以下全て敬称を略しています)

昨年の9月23日に開幕した、日本史上初のフットサル全国リーグ「Fリーグ」。
3巡するリーグ戦も2巡を終了した。(座談会開催時点)
優勝戦線も大詰めになり、なんだかんだ言ってもかなり絞られてきた感もある。

そこで今回は、ピッチ上で繰り広げられる「Fリーグ」の試合そのものについて、
そして、ホームアンドアウェイというフットサル史上初の厳しい環境での試合、地方でのセントラル開催という試みといったピッチ外での出来事などについて、深く深く語っていただいた。

 

フットサルネット Fリーグとの比較対象は、
昨シーズンまでトップリーグだった関東などの地域リーグということになりますよね。
地域リーグからFリーグになって、いろいろな変化が出てきていると。

でも、去年は同じメンツでやってたフットサルが面白かったのに、
同じメンツでやってるフットサルがFリーグになったっていうだけで
面白くなくなったと感じるのはどうしてなんでしょう?

ちょっと不自然にも思えるんですが。

橋爪 そこは各チームにプロの監督が来たからなんでしょうか。

監督はやっぱり結果残さなきゃいけない。

でも、負けてもいいから、
すごい面白いことをしようという監督はあまりいないように思います。

リアリストが多いというか「ロマン派」は少ない。

  ロマン派(笑)! でも、ほしかったですね。

こういうときに引き合いに出されるのがフトゥーロですよね。

ああいう、ある程度結果を度外視してでも、
自分たちのスタイルを貫き通す、っていうチームがいてもいい。

もちろん各チームがどんなフットサルをするかは、
フタを空けてみないとわからないことだったんですけど。

フットサルネット 湘南なんかロマンを感じさせる数少ないFリーグのチームかなと思ったんですけど。

菊地 でも、そもそも、そういうロマン派の人たちは、
Fリーグに参加することに興味がないんじゃないかな。

だけど、それって別に悪いことじゃない。

FリーグはFリーグで独自の目指す方向があるだろうし、
そういうファンを獲得していけばいい。

逆に今言っている話っていうのは、コアなファンの気持ち。

そういう人たちには、関東リーグという面白い、
しかもタダで見られるものがあるわけだから、
そっちで楽しめば全然問題ないと思うんですよ。

そことFリーグを比較したり、対抗させたりするから話がややこしいわけで。

いろんなフットサルがあってしかるべきなんだから、
日本の中でもそこで繋げなくてもいいのかなって。

フットサルネット なるほど。

橋爪 試合運びという点で変化を感じるのがラスト3分のところ。

これまでのフットサルは、20分ある時間の内のラスト3分からが本番という感じもあったんですが。

2点差、3点差ぐらいラスト3分で平気でひっくり返るのを何度も見てきた。

でも今は「たぶん何も起こらないだろう」っていう感じがしてしまう。

そこはスポーツとしては進化している部分ではあると思うんですけど。

  そうなっている、もう一つの要因がチーム間のレベル差ですよね。

例えば今日(1月12日)の浦安と湘南の試合だったら、
両チームの力関係から最後に何か起こるかもっていう期待はありましたけど、
どうにもならない、ひっくり返りようのない場合も多い。

フットサルネット 長野でのセントラルなんてそうでしたよね。

  長野開催はいちばん顕著ですよ。

5点差以上つけられたら、何も起こりようがないじゃないですか?

拮抗したゲームがある一方で、どうにもならない差を感じるゲームもある。

橋爪 ピッチの上での格差だけでなく、運営面も含めたチームとしての格差も、
最後のほうになって出てきているのかなと。

チーム名を出して申し訳ないけど、開幕3試合目ぐらいまで見たときに、
花巻は下馬評とはまったく異なる、覆す結果を出してくれるんじゃないかって
いう期待がものすごくあって。

第2節で町田に勝ったときはシュート決定率が高くて、
少ないチャンスをモノにしていくチームなんだと認識を改めた。

だけど、1巡目が終わったあたりから勝てなくなって、
ゴールすら遠くなって、今は最下位になってしまっている。

  ホーム&アウエーの影響も見逃せない。

これは一口に距離だけの問題じゃないんですよね、
移動手段とかも含まれくるし、そこはチームによってかなり違ってくる。

例えば、名古屋が湘南に行くときは、新幹線を使う。

でも、逆に湘南が名古屋に行くときは、
マイクロバスですし詰めになって5時間以上かけて行くわけですよ。

湘南のアウエーでの勝率が極端に低いのって、それと無関係ではないでしょう。

フットサルネット マイクロバスっていうのは、どのぐらいのサイズのですか?

  一人で1席使って、選手とスタッフ20人ぐらいでぎっしりになるぐらいです。

高校のサッカー部で使われる感じの。

フットサルネット 花巻もそんな感じなんですか?

橋爪 花巻は長野にはマイクロバスで来てましたよ。

ホームページで公開してましたから。

フットサルネット 前泊もしてないんですか?

  する場合としない場合がありますね。

大分なんて、町田戦のときは東京にその日の昼に着いて、
試合が終わったら帰ってましたから。東京と九州を日帰りですよ!

菊地 それはリーグ戦ならではのことで、
長丁場の戦いでやっぱりコンディションの波があったりとか、
序盤で息切れしちうようなチームもあるわけだし、
リーグ全体としてのおもしろさがあるから。

そういうことは、もっともっと知られていくべきだと思うんだよね。

橋爪 試合中のプレーだけじゃなく、
そのチームの置かれている状況とかも知られるようになれば、
見る側の興味も出てくると思いますし。

演出過多になってはいけないですけど、
お金持ちクラブ対貧乏クラブという構図をアピールしてもいいかもしれないし。


Fリーグ2007・最終節間近・座談企画 第1回



【Fリーグ2007・最終節間近・座談企画】


【第1回】

試合の面白さの軸が変化してきている

●座談会参加メンバー:
菊地芳樹氏(ストライカーDX)、橋爪充(フットサルLife)、北健一郎氏(ストライカーDX)
(以下全て敬称を略しています)

昨年の9月23日に開幕した、日本史上初のフットサル全国リーグ「Fリーグ」。
3巡するリーグ戦も2巡を終了した。(座談会開催時点)
優勝戦線も大詰めになり、なんだかんだ言ってもかなり絞られてきた感もある。

そこで今回は、ピッチ上で繰り広げられる「Fリーグ」の試合そのものについて、
そして、ホームアンドアウェイというフットサル史上初の厳しい環境での試合、地方でのセントラル開催という試みといったピッチ外での出来事などについて、深く深く語っていただいた。



フットサルネット まず最初にピッチ上での出来事の話からしてみたいなと思うんですけど。

Fリーグは9月23日に開幕して2巡目が終わって、
3巡目に入ってちょうど今大詰めを迎えているわけですが。

試合のレベルっていう軸もあれば、
ゲームとして面白いかっていう軸もあると思うんですが。

まず北さんはどう感じますか?

  ゲームとしての面白さということでいうと、
ピッチのテンションに引き込まれて腰が浮き上がり、
目まぐるしい試合展開にストピングしちゃう、っていう試合は少なくなったような。

1分先に何があるかわからないような試合っていうのは確実に減っていると思います。

裏を返せば、それはリスクマネージメントがしっかりしてきたということ。

各チームにプロの監督が来て、ゲームの流れを外から見れる人ができて、
ゲームの不確実性というか余白の部分が小さくなっている。

今思うと、これまでリスクマネージメントはほとんどないに等しいもの
だったのかもしれない。

名古屋にしても浦安にしても、
リスクをしっかり管理できるチームが出てきたのはもちろん好ましいんですが、
ゲームが面白くなるかというと、それはまた別の話で。

フットサルネット  Fリーグの今の試合を"ワンショット"でパッと見せられても、
「おっ」ってなるようなものがあまりないんじゃないかと。

長い目で見れば、これは次へのステップだとも捉えられるんですが。

橋爪 「フットサルって、こういうものだったけ?」って思う瞬間が、
Fリーグを見ていると時々あるんですよ。

北さんがいったように、
40分トータルでモノを考えられる監督がいるってことによって、
ゲームの意外性が失われていて。

フットサル=意外性の連続っていうのが僕の中でイメージとしてあったんですけど、
そこがだんだん崩れている。

そういうところに、一抹の寂しさは感じます。

レベルとの兼ね合いは難しいところですが。

  変な話し、僕らは"稚拙なゲーム運び"が好きだったんですよね。

橋爪 それはありますね(笑)

  お互いに脇が甘いというか、落ち着きのない試合展開が好きだった。

そこに魅せられたところはあるし。

橋爪 そうそう。フットサルの取材陣も、
そこが好きで入ってきたって方が意外と多いじゃないですか、おそらく。

だから取材する側もその部分で戸惑いがあるのかも。

もっとフットサルってこんなにおもしろいのに、
それが世間にこういう風に伝わってほしいのに、
目の前で行われているゲームはそれとは違うものだったりするケースが多くて......。

 菊地さんが、04年の世界選手権について
「フットサルの達人(学研・ストライカーDX特別編集)」というムックで
「フットサルははっきり言って、どんどんつまらない方向にいっている」
って書いていたじゃないですか? 

スペインの戦い方についてだったと思うんですが、
それともつながってくるのかなと。

フットサルネット どうですか? 菊地さん。

菊地 今はすごく中途半端になっていると思う。

エンターテイメントとしても、技術的にも。

日本のトップ・オブ・トップの選手が集まっているリーグではないから、
チームによってレベルのバラつきがあることが大きい。

例えば、浦安、名古屋のレベルが8チーム揃ってから印象って
違ってくると思うんですけど。

フットサルネット 私自身は現場で見ていないんですが、
北九州で行われた名古屋対浦安(4?1)は、たぶん今シーズンの
行方を決める試合だったと思うんです。

この試合の面白みは、これまでのフットサルの面白みとは......。

菊地 違うと思いますね。

いちばんは技術的なところ。他のチームとの比較になりますが、
まず単純なところでのミスがない。

スピード感もあるし、お互いに監督が策を練って出し合ってくる。

そういう面では全然違った面白さがあったと思う。

  僕があの試合とダブって見えたのが、第8回全日本選手権の
ロンドリーナとカスカヴェウの準決勝。

あの時もものすごい緊迫感があって、イージーなミスがあんまりなくて。

間違いなく当時のフットサル界の最高レベルだったと思うんですが、
あれはまたあれで別のおもしろさがあって。点はそんなに入ってないんですけど。

菊地 2-1でロンドリーナが勝ったんだよね。延長戦になって。

  その性質の面白さなのかなと。

一つのミスが命取りになる、張り詰めた緊張感の中でのゲーム。

フットサルネット リーグの大一番とか、事実上の決勝戦とか、
そういう状況を含めてのものですか。

橋爪 それは会場にいないと味わえないのかもしれない。

  あのピリッと引き締まった空気の中に身を置いていないと。

Fリーグ2007・第16節レポート「湘南」vs「浦安」

【第16節:2008年1月12日(土)開催 (代々木第一体育館)】
<湘南ベルマーレ vs バルドラール浦安>
 (文:北健一郎)

湘南ベルマーレ 1-1 バルドラール浦安
0-2
1-3



「シト・マジック」でピンチを切り抜ける

2008年の初戦となるこの試合は、2位の浦安にとっていきなりの正念場だった。1-4で敗れた首位・名古屋との試合で警告を受けた、ピヴォの20稲田祐介とアラの藤井健太が揃って出場停止に。4位・湘南とのゲームに主力2人を欠いて臨まなければなくなったからだ。

20稲田も藤井もチーム戦術上のキーマンでもある。

20稲田はチームにいるピヴォの中で唯一、前線でどっしりと張ってボールをキープできるタイプ。彼がピッチにいる時間帯はピヴォを起点に攻める。その他のピヴォの高橋健介、中島孝は幅広く動き回ってボールに絡むタイプで戦い方は変わってくる。

藤井のほうはチームのパス回しの中心になるとともに、セットプレーでは"スイッチャー"の役割も果たす。サインプレーをするのか、止めるのか、敵の出方を見てギリギリでプレーを変えることに関して、藤井の右に出るものはいない。ベンチにいるときでも、セットプレーになると藤井がピッチに入るのはそのためだ。

現在、浦安と名古屋の勝点差は「5」。直接対決は全て戦い終えているため、自力優勝の芽はない。それでも、浦安にはまだ優勝の可能性は残されている。そのためには残り6試合を何が何でも勝たなくてはいけない。

 

藤井と20稲田と入れ替わる形で、名古屋戦で出場停止だった小宮山友祐が復帰。GKの川原永光、市原誉昭、稲葉洸太郎、会田晃二と共にスタメンに名を連ねた。

湘南はこの試合も、負傷中の岡田ジオゴサントスがコーチとしてベンチに入り采配を行う。こちらもケガやコンディションの問題で伊久間洋輔、野嶋倫、奥村敬人といった主力を大幅に欠いた陣容。スタメンはGKに阿久津貴志、大地悟、豊島明、荻窪貴志、篠崎隆樹という組み合わせだ。

この試合が初出場・初スタメンとなった会田は「チームで4番目のピヴォ」(シト・リベラ監督)。2、3番目が高橋、中島だから、彼らをすっ飛ばしてスタメンに選ばれたということになる。ピヴォもアラもできる高橋と中島は、セカンドセットで一緒に使われていた。

シト監督はおそらく、ファーストセットは稲葉のドリブルにかけたのだと思う。前節で名古屋を相手にもドリブルで仕掛けてチャンスを作り出したように、稲葉は現在絶好調。1人でゴールを決められるだけの力を持っている。ファーストセットは稲葉のドリブルで、セカンドセットは高橋と中島のコンビで攻撃しようと思っていたのではないか。

前半、浦安は「サイドで1対1になったら勝負しようと思っていた」稲葉が左サイドでの1対1を2度制してシュートを打っていく。市原が「攻めあぐねたところはある」と語ったように、前に20稲田がいないため、横方向のパス回しが多かったのは確かだったが、それは許容範囲内といえるものだった。

13分に湘南の篠崎に先制点を許したものの、前半残り1分のところで、高橋のパスを中島が体ごと押し込んで1-1。

同点ゴールを許した前半最後の時間帯、湘南のセットは豊島明が11分から、篠崎が13分から、高橋祐、関新が14分から代わっていなかった。外から見ていても湘南の選手の足が止まり始めていただけに、ベンチが何か手を打っていれば、この失点は防げていたかもしれない。

 

後半もゲームの主役は稲葉だった。33分、湘南のGK阿久津がフィードキックを第2PK辺りにいた浦安高橋に"プレゼント"してしまう。これを高橋がゴール前左サイドに残っていた稲葉につないで難なく逆転に成功する。

1点リードした直後からシト監督が取った作戦が"ピヴォ・稲葉"。稲葉を前線に置いて、市原、小宮山、平塚雅史と守備的な3人で後ろを固める。1点差での逃げ切り、あわよくば稲葉のカウンターでもう1点を取れればという狙いだった。

すると35分、GK川原がボールを持った瞬間に「空いていたから。(川原のスローを)信じて走ろう」と稲葉が抜け出すと、川原からピンポイントのスローが稲葉とGKの間のスペースに放り込まれる。飛び出してきた阿久津を左にかわした稲葉は、倒れこみながらもシュートをねじ込み、決定的な3点目をもたらした。

湘南は大地をGKにしてパワープレー。だが、パワープレーのスペシャリスト奥村の不在が響いたか、有効打を繰り出すことはできず。浦安が3-1でゲームを"閉じた"。

シト監督は「内容が悪くても勝てる試合はある」とこの試合を評した。そして、こう続ける。「湘南が前線からプレスをかけてきたときに、我々のやりたいプレーができなかった。我々が披露できるレベルと比べても、そこまでの内容ではなかった。そういう意味でいい試合ではなかった」......といいながらも、その表情は満足気だった。

それは当たり前のことで、浦安が欲しかったのは何よりも結果。「内容が良くても勝たなければ意味がない」という小宮山の言葉は本音だろう。もちろん、内容がいいに越したことはないが、それは二の次。次の日の試合で名古屋が町田に勝ったことで勝点差は縮まらなかったが、浦安には全試合で勝つことしか道はない。

一方、これで3連敗となってしまった湘南。試合後の記者会見では、もはやお決まりのようになってきた「決定力不足」についての質問が飛び、出席したキャプテンの豊島は「気持ちの問題。それしかない」と切り捨てた。

この日の湘南のフットサルは内容的には決して悪いものではなかった。だが、この傾向は3連敗した全てのゲームに共通していること。3連敗の始まりはジオゴがケガで欠場してから始まっている。「決定力」の多くの部分をジオゴに依存していたという現実が、湘南に突きつけられている。

 

Fリーグ2007・第15節レポート「名古屋」vs「浦安」

【第15節:12月23日(日)開催 (北九州市立総合体育館)】
<名古屋オーシャンズ vs バルドラール浦安>
 (文:菊地芳樹)

名古屋オーシャンズ 2-1 バルドラール浦安
2-0
4-1



 見ているみんなが思わず前のめりになる感じの、魅力的な攻防だった。このカードを3戦とも見たが、Fリーグを引っ張るこの2チームの対戦は、間違いなく日本フットサル新時代のナショナルダービーだ。何よりも各プレーのスピードが他の試合とは全然違う、さらにそんなスピーディーな展開なのに、各選手のミスが少ないのがゲームを引き締めているのだ。

 リーグはこの日から対戦3順目。勝点2差で迎えたこの首位攻防は、まさに天王山だった。11月17日に、名古屋ホームで行われた2回目の対戦では、浦安のシト リベラ監督が、実にさまざまな策を講じながら名古屋を揺さぶろうとする、積極的な姿が印象的だった。いつもはどっしり構えている感じのシト リベラが、名古屋相手には動く。その動き方が、この対戦の一つの見どころでもある。


 今日はいつもの前線からのプレスディフェンスから、自陣に引いて守るやり方に変えてきていた。しかもスターターはGK川原永光にFPは平塚雅史、清水誠、岩本昌樹、高橋健介という、普段はセカンドセットで出てくる選手たち。「相手にシュートを打たせず、カバーリングの多いディフェンスを心がける」(シト リベラ監督)狙いに加え、この後に出てきたファーストセットで(名古屋はセカンドセットになる)、ゴールを奪う狙いもあったのではないだろうか。

 そのとおり名古屋は何度かゴール前でのシーンを作るものの、浦安が守って決定機は作らせずに試合が進んだ。そして、浦安が7分に先制ゴールを決めたので感心させられた。稲葉洸太郎が右サイドで藤井健太とのワンツーで突破し、ゴール前へ速いクロスを送った。これをファーサイドで市原誉昭が突っ込んだものだ。勢いに乗る浦安は、その後稲葉のドリブル突破や、FKのシーンなどのチャンスがあり、リズムをつかんだ。

 しかし、名古屋のほうもGK定永久男が安定したプレーで追加点を許さず、自分たちのほうへリズムを取り戻す活躍。「立ち上がりに失点して苦しかったが、選手たちが落ち着いて対応してくれた」(館山マリオ監督)。15分、右サイドを突破したマルキーニョスが左へパス。これを受けたボラが右足でトーキックシュートを決めて同点とした。名古屋は前半終了間際の19分にも、左CKのチャンス。ここでマリオ監督はタイムアウトを取って入念な打ち合わせをしたが、再開後にこのCKから完山徹一が決めて逆転。マリオ監督もさすがの采配をみせて、ハーフタイムとなった。


 名古屋は昨日同様、後半の立ち上がりにゴールを決めて、主導権をぐっと引き寄せた。ピッチ左奥で縦パスを受けた森岡薫が、右上に豪快にシュートを突き刺した。「21までは予想したプラン内の展開」(シト リベラ監督)だったという浦安だが、この失点はかなり響いたのではないだろうか。

 浦安はその後名古屋ゴールを襲い続けた。22分に稲田が振り向きシュート。23分に市原のポストプレーから藤井のシュート、同じ23分にはゴール前至近距離のFKから稲田がシュートと畳み掛けたのだが、ゴールが決まらない。というのも、何か名古屋が堅い守備でリズムを作って、浦安が攻めさせられているような感じにもなってきていた。浦安が残り8分からは岩本昌樹をGKにしてのパワープレーに入ったのは、そうした状況を打開したいからでもあるのだろう。

 だが、そのパワープレーでもなかなか決定的なチャンスは作れなかった。パス回しは非常に正確で丁寧でうまさを感じる。が、手数を掛けて回している間に名古屋が追いつき、最後は体を張ったブロックに阻まれるパターンが繰り返された。「高い確率でシュートまで持っていけた」(シト リベラ監督)というのだが、もう少しダイレクトパスを入れるとか、ミドルシュートで敵を脅かす手段があってもいいのかなと思う。

 こうなってくると勝利を目の前にした名古屋の気持ちがより充実してくる感じになり、33分、自陣右サイドのリバウンドを拾った上澤貴憲が、超正確にロングシュートを無人のゴールへ送り込み、41として試合を終了した。名古屋はこれで浦安との勝点差を5に広げた。

 「まだ試合がある」と前置きしたうえで、北原は「優勝を向けて大きな前進をしたのは間違いない」とコメント。非常に大きな勝利を得て充実の様子だった。

 

 

Fリーグ2007・第15節レポート「湘南」vs「町田」

【第15節:12月23日(日)開催 (北九州市立総合体育館)】
<湘南ベルマーレ vs ASVペスカドーラ町田>
 (文:北健一郎)

湘南ベルマーレ 1-3 ASVペスカドーラ町田
0-3
1-6



町田にあって湘南になかったもの

2日目のオープニングカードとなったこの試合は、攻撃的なこの2チームらしい、オープンな攻め合いとなった。

競技レベルとしては、正直に言えば、3試合目に行われた名古屋と浦安のほうが一段上。ミスの少なさ、プレースピードの速さ、誰が出ても質が落ちない選手層、両監督による戦術的な駆け引き――。ちょっとのミスが失点に直結する、スキの突き合いというのは現代フットサルの潮流でもある。今シーズン戦った3試合全てがそんな試合になった、この両者の戦いは、日本フットサルのレベルアップを感じさせてくれるものだ。

ただ、名古屋と浦安ほど洗練されていなくとも、湘南と町田のゲームにはそれとはまた別の面白さがある。カスカヴェウ(町田)とロンドリーナ(湘南)というブラジルの都市名をチーム名として名乗っていた両者の攻撃では、緻密かつ鮮やかなサインプレーが度々飛び出す。この、サッカーにはない、4人全員が連動したパス回しからのゴールという魅力にハマって、フットサルを好きになった人も多いはず。もちろん、現在の順位はどちらにとっても不本意だろうが......。

さて、町田のほうは金山友紀が出場停止から明けて、前節を欠場したホンダ・マルコス(ジャッピーニャ)もメンバー入り。横江玲もスタメンに復帰し、これに狩野新が加わってファーストセットを形成。これは第11節の名古屋戦以来4試合ぶりのこと。役者が揃ったチームが、昨日の大敗からどう立ち直してくるか注目される。

湘南のスタメンは前日と同じ、野嶋倫、豊島明、大地悟、荻窪孝という面々。前日の名古屋戦の立ち上がりは良かっただけに、その流れを引き継ぎたいところだ。ただし、GKは3次登録で加入して名古屋戦でFリーグデビューを飾った21青木リカルドがベンチに回って、阿久津貴志が先発した。

名古屋戦と同様に湘南がいい雰囲気で試合に入っていく。「まずはディフェンスから」という感じだった名古屋戦に比べると、この試合では「絶対に先制点を取る」という意欲が前面に出ていた。

1分、豊島のキックインがゴール前の敵に当たって、ファーサイドの野嶋へ。野嶋のシュートは体勢が崩れてミートできず、バーに弾かれたが、こぼれ玉を後ろから大地が左足でボレー。だが、今度はポストに当たってゴールならず。

3分、湘南のチャンスはまたしてもキックインから。豊島がゴール前の大地に出して、大地がトラップして落としたところに豊島が走り込みシュート。しかし、これもまたバーに跳ね返される。

5分のシーンは本当に見事な形で、沖村リカルドが右前方に出したパスを、奥村敬人が触ると見せかけてスルー。後方から駆け上がった関新が中へ折り返し、伊久間洋輔がフィニッシュ......するものの今度はサイドネットと、とことん決まらない。

フットサルらしいパス回しから、積極的にゴールを狙っていった湘南の立ち上がりは、1日4試合の1試合目という側面からも「理想的」のものだった。だが、これだけ決定的なチャンスを外していると、イケイケだったチームの雰囲気はどうしても淀んでくるもの。

 

すると8分、連動したパス回しでチャンスを作り出していた湘南をあざ笑うかのように、町田が先制点を奪う。ピヴォの位置で2人に囲まれたジャッピーニャが、独特の吸いつくようなタッチで2人の間をすり抜け、森谷優太のゴールをお膳立て。

先制を許した湘南だったが、12分に同点ゴールをゲット。滝田学のミスパスを荻窪が拾ってシュート、一度は弾かれたものの、リバウンドを逆サイドから打った篠崎隆樹のシュート性のボールを、荻窪が押し込んだ。これで荻窪は2試合連続ゴール。

18分、勝ち越し点は町田に転がり込む。キックインからダイレクトで打った横江のシュートを、GKの手前でジャッピーニャが"カット"。ピタッとトラップで止めると、ちょこんと右アウトで浮かせる、技アリのシュートを決めた。

さらに町田はタイムアップ寸前の残り1秒で第2PKを獲得。これを横江が阿久津の肩口を狙ったシュートで決めて、得点ランキング単独トップに立つ14点目。町田が3-1でリードして前半を終えた。

後半1分の、CKから金山が挙げた4点目で、勝敗は決したといっていい。狩野がゴール前にいれた低く速いボールを、ニアに走り込んだジャッピーニャがスルー、ファーで金山が合わせるというシンプルな形だが、タッチライン沿いにミドルを狙おうとしていた横江を警戒心がいったことも、サインプレーに引っ掛かった要因だろう。

3点差となった湘南は奥村をGKにしてパワープレーを開始したが、逆に34分に金山にインターセプトから、37分に久光に自陣からのロングシュートを決められて、5点差と傷口を広げる結果に。

湘南のパワープレーは奥村のパスを右サイド奥のレフティーの選手が流し込む、というのが一つの形だが、この日のメンバーで左利きは3次登録で加入した篠崎のみだったため、右利きの選手のみで行った。パワープレーになることを想定して、やり方を熟知しているレフティーの近藤純也を入れておくのも手だったのではないだろうか。

この試合、勝った町田にあって、負けた湘南になかったもの。それは「シュートへの積極性」だったと思う。後半は湘南がパワープレーに出てきたので対象外とすると、湘南のほうが押していたという印象のある前半でさえ、シュート数では湘南の18に対して、町田が27と大きく上回っている。

そのうちの11本を打っているのが横江だ。リーグ全体でも最もシュートを打っている(13試合で113本)横江は、ゴールが見えれば迷わず打ちに行く。なので、湘南の選手は最低でも1枚、ときには2枚でブロックに行かざるをえない。それによって他の選手のマークが空いたり、集中力が分散して、2点目、3点目のような形でのゴールが決まるという波及効果がある。

町田も湘南もポンポンとつなぐ「美しい」パス回しが、チームのカラーであり、ウリになっている。だが、そのリズムを崩してでも打ってくる横江の「シュート」が、町田の攻撃を「怖い」ものにしていた。

6-1という点差ほどの開きはないし、むしろ内容的には湘南のほうが上といっていいぐらいだった。では、どうして湘南は敗れたのか。

キャプテンの豊島は試合後の記者会見で「決めるべきところで外した」ことを敗因に挙げたが、湘南に必要なのは、パスで完全に崩しての「決めるべきところ」以外でもゴールをこじ開けようとする、強引さではないかと思う。対戦相手の横江のような、あるいは、ケガでコーチとして見守った、チームメートの岡田サントスジオゴのような。

 

Fリーグ2007・第14節レポート「湘南」vs「名古屋」

【第14節:12月22日(土)開催 (北九州市立総合体育館)】
<湘南ベルマーレ vs 名古屋オーシャンズ>
 (文:菊地芳樹)

湘南ベルマーレ 0-1 名古屋オーシャンズ
1-4
1-5



 2週間前の長野県ホワイトリングでのセントラル開催2節分では、上位対下位の対戦が多かった。これに対し、今回の福岡県北九州市立総合体育館でのセントラル開催2節分は、上位同士の対戦が多く、注目を集めた。ホワイトリングの2連戦で、遂に首位に立った名古屋と、追い抜かれた2位浦安の争いは、この2日間の大きなテーマだった。

 遠い北九州の地だったが、名古屋の応援団はそれでも50人くらい集まっていただろうか。全体では1254人。キャパが5000人の立派な体育館だけに、さびしい感じは如何ともしようがない。それでもピッチ上はホットな戦いになった。

 名古屋に対した3位の湘南は、エースの岡田サントス ジオゴがケガのため、ベンチでの采配に専念。対戦相手の現状分析に定評があるジオゴの採った作戦は、名古屋に対して自陣に引き、ハーフラインからの守りを徹底することだった。ここのところ、名古屋相手に各チームが採る対策でもある。立ち上がりからしばらくは、その湘南に勢いがあるように見受けられた。名古屋の攻撃をしっかりと受け止め、カウンターを中心にシュートまで持ち込むシーンが目立った。

 しかし、名古屋にとっても、これは想定内の展開だった。「焦らずに忍耐力が必要だった。前半はセーフティにやれという指示。カウンターに気をつけるようにした」(名古屋・館山マリオ監督)。そのとおり、ボールをテンポよく回しながら攻めて、湘南を揺さぶりにかかっていた名古屋だが、たとえボールを奪われて攻め込まれても、素早く切り替えてしっかり守り、ここでゴールを許さなかったのがポイントになった。

 展開が変わってきたのは、ボラがこの日初めて出てきた11分過ぎからだ。ここのところ、いわゆるボールを「いじる」個人技で会場を沸かせることの多いボラ。あまりやりすぎると、チームのテンポが乱れるのかベンチに下げられてしまうのだが、程よくワザを繰り出している間は、チームの確かなアクセントになっている。16分には、そのボラが左サイドでのボディーフェイクから、一瞬のスピードで敵を縦にかわし、左足シュート。これはGKが弾いたのだが、北原亘がファーサイドでしかりつめて先制点を挙げた。

 このシーンでボラに対峙していた湘南の選手は、この日初出場した飯田敏基。息が上がったのか、プレーがやや混乱にしているように見えていたところで、交代時期と思われるところだった。湘南はゲームの中でこうした不要に危なくなりそうなマッチアップを作ってしまい、もったいない失点を食らう場面が、シーズンを通して非常に多いと思う。

 前半はこの1点のみだったので、湘南は巻き返しのチャンスが十分にあったが、後半立ち上がり早々の失点で、展開を苦しくしてしまった。名古屋の右サイドからのキックインだったが、完山徹一が速いボールをファーサイドへ送り、マークを外した北原がピタリと合わせた。

 湘南にも、この後何度かのゴールチャンスが巡ってきた。大きかったのは24分のシーンで、左の大地悟から中央フリーで走りこんだ関新にボールが入ったのだが、シュートは右へ外れてしまった。

 一方で名古屋は25分に、マルキーニョスがゴールを決めて3点目。後方からのボールを右サイドで受けながら敵と入れ替わり、GKのポジションがズレてニアが空いていたのを見逃さず、正確にシュートを決めた。30分には比嘉リカルドが自陣で奪ったボールから速攻を試み、右のマルキーニョス、左の上澤貴憲とつないでゴール。31分にも右奥でボールを受けた小山剛史が、中央へマイナスに折り返し、完山が流し込んで5-0とし、点差を広げた。

 このあたりの、湘南を有無をいわさずに引き離していく名古屋の姿は、昨年の憎たらしいくらいに強かったときの姿とダブる気がする。コンディションのよさがうかがえ、今季の充実期に入っているのではないだろうか。

 湘南は34分に、1点を返した。篠崎隆樹の左からのシュートを、ゴール前で大地がコースを変えたものだ。残り4分からは奥村敬人をGKにしてパワープレーをスタート。しかし、名古屋の堅い守備が勝り、可能性のあるシュートは少なかった。

 湘南があれだけの勢いで名古屋に対したのだが、名古屋はそれをしっかりと受けながらもやり返す横綱相撲を取った。名古屋の強さを際立たせるような一戦だった。

Fリーグ2007・第14節レポート「町田」vs「浦安」

【第14節:12月22日(土)開催 (北九州市立総合体育館)】
<ASVペスカドーラ町田 vs バルドラール浦安>
 (文:北健一郎)

ASVペスカドーラ町田 0-3 バルドラール浦安
1-5
1-8



「町田×浦安=名勝負」の法則、崩れる

この試合は絶対に名勝負になる――。そう信じて疑わなかった僕の目の前で、「町田×浦安=名勝負」という法則は裏切られた。北九州市立総合体育館で行われる8試合の1試合目で待っていたのは、浦安の圧勝劇だった。

試合前から町田にはいくつかの不安材料があった。メンバーリストには金山友紀、ホンダ・マルコスの名前がない。金山は累積警告で出場停止、ジャッピーニャは体調不良がその理由だった。トップスコアラーの横江玲も11節の名古屋戦で負ったケガから明けて初めてのベンチ入り。そんな中で名前の横にスタメンを意味する「○」印がついていたのは、石渡良太(GK)、滝田学、甲斐修侍、狩野新、相根澄という、狩野を除けばセカンドセットのメンバーだった。

長野開催の2連戦で首位から陥落したものの、翌日の名古屋戦の"頂上決戦"で勝てば地力優勝の可能性が復活する2位・浦安にとってはここでつまづくわけにはいかない。町田戦のスタメンとしてシト・リベラ監督が選んだのは、川原永光(GK)、小宮山友祐、藤井健太、稲葉洸太郎、稲田祐介と、こちらもスタメンの次に出てくることが多いセットだった。

開始2分だった。昨シーズンまで町田の前身・カスカヴェウに所属していた稲田が口火を切る。右サイドのタッチライン際の小宮山との"パラレラ"と呼ばれる、中からサイドに出して走り込んでリターンを受ける形からのシュートが決まった。

追加点は10分。右サイドで高橋健介がドリブルで2人を引きつけて折り返した先には、完全にフリーになっていた稲田。稲田はワントラップからゴール左スミにシュートを突き刺し、2点差とする。

13分には3点目が決まる。藤井が左サイドで前方の中島孝にパスをすると、中島はすぐにリターンすると見せかけて縦に切り返す。敵の逆を取ったところで、ゴール前に走りこんだ藤井にピタリとパスを合わせた。

浦安が3点を先取する――。ここまでは第5節で戦ったときと同じ展開である。前回はここから町田が猛反撃を見せて、甲斐の2ゴールを含む4得点で一度は逆転したものの、最後は浦安がパワープレーなどから2点をもぎ取り5-4で勝利している。

だが今回はそんなドラマチックな展開にはならなかった。その要因として最も大きいものが、バイアーノ監督が「敵のディフェンスをかいくぐることが今日は全くできなかった」と試合後の記者会見の冒頭で語ったように、相手の第一ラインを突破できなかったことにあった。

 

自陣でボールを持った町田の選手に対して、浦安の選手がワッと取り囲み、そこでボールを奪うか、町田の選手が苦し紛れに出したパスを拾ってカウンター。そんなシーンがこの日は何度も繰り返された。パスで組み立てようとする町田のプレースタイルは、浦安のディフェンス戦術であるハイプレスの格好の餌食となった。

ハイプレスを回避する方法は大きく分けて2つある。一つは町田が試みたように、自陣で細かくパスをつないで敵をかわすやり方で、もう一つがゴレイロからのスローや、ロングボールを前線の選手に蹴り込むというシンプルなものだ。

浦安の場合は敵が前からプレスをかけてきたときには、ピヴォの稲田や中島が敵陣深くにポジションを取って、そこへGKの川原がロングボールを入れて敵のプレスラインを押し下げるといことをやっている。

だが、町田はそれをしなかった。確かに町田のGKの石渡のスローイング技術は川原より劣るし、ピヴォの相根には稲田ほどのキープ力はない。それでも、プレスを常にかけられて息が上がっている中で、一呼吸入れるためにも、ロングボールを使っても良かったのではないだろうか。

町田には、自分たちのウリである素早いパス回しがジャッピーニャ、金山、横江、狩野が揃ったときしかできていない、という現実がある。この日のように4人のうち2人がかけてしまうと、ワンタッチ、ツータッチでのパス回しではなく、一人ひとりがボールを持ってからパスコースを探すようになり、途端に連動性を失ってしまうのだ。主力選手が欠けた状態でも「いつもの自分たちのやり方」を貫こうとしたこと、それがこの日の大敗の要因だろう。

19分、GKの石渡がペナルティーエリアの外で手を使って止めたとして退場してしまう。その後のFP3人での2分間は耐え抜いたものの、29分、パワープレーに出たところの突かれて稲葉に4点目を決められる。その40秒後には、清水誠が自陣からのロングシュートで5点目。ちなみに、この清水のゴールが記念すべきFリーグ300点目となった。

最も意識するライバルに5失点したことで「切れた」状態になってしまった町田に対して、浦安は32分に岩本昌樹、38分に小宮山、39分に中島と着々と加点。町田は37分に狩野のシュートが敵に当たってコースが変わって1点を返して、何とか「無得点」は免れた。

浦安は8ゴールで勢いをつけて名古屋戦に挑むことができる。早い段階で点差がついたことことで、選手たちの消耗も抑えることができたのも良かった。ただ唯一、守備の要の小宮山が警告を受けて出場停止になったことは悔やまれる。しかも警告は後半に出ている。審判の判定基準というある種不可抗力の面があったとはいえ、余裕のあるゲーム展開だっただけに防げたのではないかという思いは残る。

町田にとって、この結果は現時点での2位のチームと5位のチームという現実が反映されたものともいえる。ショッキングなこの敗戦を受け止め、しかし、気持ちは切り替えて、翌日の湘南戦に臨まなければいけない。浦安とは3巡目でもう1回対戦がある。そのときは、この2チームの戦いにふさわしい「名勝負」を見たいところだ。

 

Fリーグ2007・第13節レポート「大阪」vs「浦安」

【第13節:12月9日(日)開催 (長野ホワイトリング)】
<シュライカー大阪 vs バルドラール浦安>
 (文:北健一郎)

 
シュライカー大阪 1-2 バルドラール浦安
3-2
4-4



ジェットコースターゲーム

2日間で行われた8試合の中でベストゲームともいえるのが、この試合だった。大阪が先手を取り、浦安が逆転し、それを大阪がひっくり返し、最後に浦安が追いつくという劇的な展開は見ごたえ十分だった。フットサルをあまり見たことない人でも、素直に楽しめるゲームだったと思う。

この試合、浦安としては勝点3が絶対にほしかった。前日の神戸戦で引き分け、勝点では並んでいるものの、得失点差で下回り、名古屋に首位を明け渡したばかり。前の試合で名古屋は花巻に快勝して、勝点3を上積みして、浦安にプレッシャーをかけている。

浦安にとってディスアドバンテージとなっていたのが1日目の神戸戦(△0-0)が、「40分間、最後まで戦わなくてはいけないゲーム」(シト監督)になったことだった。また、浦安の主力選手は30才前後が大半を占めている。大阪戦、シト監督はスタメンに清水誠を、ベンチに江藤正博とフレッシュなメンバーを抜擢した。

大阪は湘南戦で岸本武志が退場、奥田亘が累積警告でこの試合は出場停止。湘南戦のスタメン2人を欠いたことによって、アドリアーノ監督は「シンプルな戦い方」をするようにチームに伝えた。

原田健司前監督、アドリアーノ監督と大阪が今シーズンの基本的な戦術として取り組んできたのが、「ヘドンド」と呼ばれるパス回しだ。FP4人がピッチを"旋回"するように動きながらパスを回して、敵のマークをズラすのがこの戦術の目的だ。

だが、敵のマークがズレた瞬間に的確にパスを出せる選手がいなければ、これは成り立たない。大阪におけるその役割は岸本であり、彼の不在となれば効果は著しく落ちる。それがアドリアーノ監督が「シンプルな戦い方」に切り替えた理由だろう。

大阪の「シンプルな戦い方」とは、ピヴォの原田に当てる「ピヴォ当て」を攻撃のメインにすることだ。現役復帰したばかりの原田にとって、常に動き回るヘドンドの中でのプレーは負担が大きい。だが、周りが自分にボールを集めてくれるピヴォ当てであれば、運動量は軽減されるうえに、自分の持ち味であるキープ力を最大限に発揮できる。

4分、"原点回帰"した大阪が、幸先良く先制する。瀬戸彬仁のFKをGKの正面で原田が合わせる。川原永光が弾いたボールを後方にいた鈴木磨人が押し込んだ。

その後も大阪は5分、原田が左サイドで市原誉昭を背負った状態から反転して、左足シュート。6分には、右サイドでボールを持った林浩平が、藤井健太を強引なドリブルでかわしてシュート。大阪は1対1の場面での積極性が目立つ。

チームが攻め込まれているこの間、浦安のシト監督は最初の2セットから外れていた稲葉洸太郎に入念な指示を与えていた。その稲葉が13分、浦安に同点弾をもたらす。右サイドでボールを持つと、足裏を使ったフェイントで2人をかわし、左足シュートを決める。

39分には、大阪の横パスを自陣でパスカットした藤井健太がそのまま持ち上がり、左サイドの稲田祐介へラストパス。稲田はファーを狙うようなモーションから、逆を取ってニアに蹴り込み、2-1。浦安が逆転に成功して、前半を折り返した。

 

後半、2点差、3点差と突き放したい浦安は積極的にシュートを打っていく。1分、CKから中島孝が左足を振り抜く(ファーに外れる)。10分、高橋健介がキックインに走り込んでミドルシュート(GK正面)。11分、左サイドで岩本昌樹が敵をかわしてシュート(ファーに外れる)。と、どのシュートもゴールに結びつかない。

この3つのシュートに共通しているのが、「単発」で終わっていたということである。中島と岩本のシュートはセカンドポストに誰かが走り込んでいれば1点モノだったし、高橋のシュートも誰かが詰めていれば、GKはこぼしていたかもしれない。

ゴールが小さいフットサルの場合、1発目のシュートではなかなか決まらない。そこで"こぼれ球"や、"流れ球"などをどれだけ狙っているかが、ゴールになるかならないかの大きな鍵となる。もちろん浦安の選手は、そんなこと百も承知だっただろうが、前日の疲れからか「セカンドチャンス」を狙う意識に欠けていたように思う。

浦安の詰めの甘さに助けられ、大阪が徐々に息を吹き返していく。31分だった、左サイドから21岩岡慶宜が中へ切れ込み、右足を振り抜く。前日の湘南戦ではベンチ入りもしていなかった「伏兵」のシュートは、川原の手を弾いてゴールネットを揺らした。ゴールを決めた21岩岡が大阪ベンチでもみくちゃにされる。それから1分後、大阪は21岩岡のゴールと似たような形から、今度は神戸がスピードドリブルで突っかけて3点目をゲット。瞬く間に大阪が2点を加点して3-2とする。

そこから大阪は残り7分以上を残して、FP4人全員が自陣に引いて守備を固める。そんな大阪にさらなる追い風が吹いたのが37分のこと。敵陣の右サイドでキックインを得た大阪だったが、キッカーの瀬戸以外の選手は上がらず、自陣に残ったまま。キックインから直接ゴールに入っても得点にはならない。それでも、自陣に返すよりはマシだと判断した瀬戸はゴールマウスに目掛けて蹴る。これをとっさにキャッチしようとした川原がファンブル。「私の監督経験の中でも見たことがないゴール」(シト監督)で、大阪に4点目が転がり込む。

大阪にとっては幸運すぎる追加点。残り時間は2分。これに勝てば10月7日の第3節・花巻戦戦以来の2勝目となる大阪のムードは、最高潮に達する。敵のシュートをブロックする、ドリブルを止めてクリアするなどワンプレーごとに、「ウェーェェイ!」という叫び声がピッチ、ベンチの両方向から飛び出す。

しかし、浦安も食い下がる。38分、中央から藤井健太が出した縦パスを稲田がシュート。これがゴール前の混戦で大阪選手に当たってオウンゴール。浦安が4-3と1点差に詰め寄る。

大阪の1点リードで迎えたタイムアップ7秒前。左サイドで藤井が縦突破から左足シュート。これはブロックされたものの、その跳ね返りを今度は右足で打つ――。浦安の希望をつなぐ、大阪の願いを打ち砕くゴールを決めたのは、やはりこの男だった。第5節でも名古屋を相手に残り27秒で同点弾を決めた藤井が、またも大仕事をやってのけた。

試合後の記者会見に臨んだ浦安のシト監督は、「セントラルの2日間に我々の悪いときが重なってしまったということ」とこの2日間を締めくくった。名古屋とは勝点2差がついてしまったが、12月22・23日に北九州で行われるセントラル開催の第15節では、名古屋との直接対決がある。次に向けて気持ちを切り替えなければならない。

大阪のアドリアーノ監督は戦術家として名を馳せるが、この日ばかりは「一人ひとりの気持ちのおかげでいい試合ができた」と選手のファイティングスピリットを称えた。これまでの大阪にいちばん足りなかった、チームとして一つにまとまると経験ができたことは、彼らにとって大きな財産になるだろう。

 

Fリーグ2007・第12節レポート「神戸」vs「浦安」

【第12節:12月8日(土)開催 (長野ホワイトリング)】
<デウソン神戸 vs バルドラール浦安>
 (文:北健一郎)

デウソン神戸 0-0 バルドラール浦安
0-0
0-0



大興奮のスコアレスドロー

4試合の中で試合後のスタンドからの拍手が最も大きかったのが、このゲームだった。スコアは0-0。一度もゴールネットが揺れることはなかったにもかかわらず、だ。

フットサルは基本的にゴールが生まれやすいスポーツだと言われているし、それがサッカーと比較するときのこのスポーツのウリにもなっている。実際にその言葉は間違いではなく、この試合までFリーグが46試合行われた中でも、両チーム共に得点がなかったのは1試合しかない(第11節の花巻-大阪戦)。この日のホワイトリングに足を運んだお客さんの中にも、ゴールシーンをたくさん見たいという人が多かったはず。どうして1点も入らなかったこの試合の拍手が一番大きかったのだろうか。

端的にいえば「接戦」だったからだろう。第1試合の名古屋と大分は3-0、第2試合の町田-花巻は8-0、この後の第4試合の湘南-大阪も6-3と、ゴールは入ったものの一方的なゲームだった中で、この試合だけが「どっちが勝つかわからない」というスリリング感に溢れていた。そこにお客さんは面白さを感じたのだと思う。

神戸はスタメンを開始1、2プレーで入れ替えてきた。だから、事実上のスタメン(何か変な言葉だな)はゴレイロ村山竜三、山元優典、須藤慎一、田中智基、岸田健太郎ということになる。浦安のほうはここ最近スターターとして定着化してきた、ゴレイロ川原永光、平塚雅史、岩本昌樹、中島孝、高橋健介。

浦安のスタメンに関しては、ゴール率については次のセットの小宮山友祐、藤井健太、稲葉洸太郎、稲田祐介のほうが高い。だから、言い方は悪いがスタメンで様子を見て、次のセットで勝負をかける(点を取る)。そういう狙いがあるのだろう。また、バリバリのピヴォの稲田のいるセットではピヴォをたくさん使うが、1stセットの高橋は流動的なパス回しの中で仕事をするタイプで、戦い方も異なる。神戸としては浦安のパス回し中心の1stセットに対して、運動量で勝負する2ndセットをぶつけたのかもしれない。

だが、試合開始からわずか5分、神戸に"アクシデント"が起こる。ゴール前で決定的なチャンスを迎えようとしていた稲葉を、ブルノが手を使って止めたプレーに対して、1発レッドが出される。

ブルノといえば、負傷欠場中の原田浩平と共に神戸の攻撃の「2本柱」ともいえる存在。なおかつ、奇想天外な足ワザで魅せてくれるる人気者でもある。出場停止から明けたばっかりだったのに5分で見納め、しかも次の日も出られない。僕は記者席から審判に向かって思わず叫んでしまった「空気、読めよ!」と......。とにもかくにも神戸はFP3人での2分間を過ごさなければならなくなった。

浦安はフィクソの小宮山に代えて高橋を投入。藤井、稲葉、稲田と共に超攻撃的メンバーで点を取りに行ったが、浦安のゴールをこじ開けることができない。試合後の記者会見に出席したシト・リベラ監督、市原誉昭が「あの時間帯で点を取れなかったことが悔やまれる」と口を揃えたように、この時間帯で決められなかったことが、引き分けという結果を呼び込むことになる。

10分15分辺りからゲームはこう着状態に突入。浦安はパスを回して神戸のプレスをいなそうとするのだが、球際でバチンと当たってくるので、プレーの一つひとつの精度がちょっとずつ落ちる。それが積み重なり微妙にリズムを狂わされている感じだった。最後のほうに浦安が立て続けにチャンスを迎えるも、ゴールはならず、前半終了。

 

後半、先に仕掛けたのは神戸のほうだった。通称「前プレ」と呼ばれる、前線からの追い込みで浦安を慌てさせた。ベンチの様子を見る限り、この辺の指示は選手の伊藤正範がしている様子。このチームでは唯一、フットサル日本代表にも選ばれたことのある彼が、「フットサルは知らないが能力はある」神戸の選手をうまく使いこなしているのも、神戸躍進の要因の一つだろう。

神戸がプレスに出てきたことで、浦安との主戦場はピッチの真ん中辺りになった。浦安としてはそこを掻い潜れば大チャンスになるわけだが、神戸の球際の強さ、気持ちの強さは相当なもの。また、ピヴォの稲田に大しては山元がしっかりと見張っている。

逆に26分にはクイックリスタートから田中がドリブルで抜け出し、川原を右にかわしてシュートを打つもサイドネット。28分には脇がリフティングコントロールで前を向いてボレーシュート。これは決まったかと思われたが、「川原にしかできない」スーパーセーブで弾き出す。33分には泰澤秀幸が左に展開したパスを、須藤がダイレクトで中に入れて、田中がファーサイドで合わせたが、シュートは枠を外れる。単純な「決定機」という意味では神戸のほうが多かった。

残り4分25秒で浦安のタイムアウト。そこから浦安は、ここまで数々の苦境を打開してきたパワープレーに出る。名古屋がすでに勝ったため、引き分けでは首位を明け渡すことになることもあっただろう。浦安の個々の技術の高さはさすがで、数的有利の状態では敵にボールを全くといっていいほど触らせない。だが、神戸も最後のシュートのところではしっかりと体を張ってゴールを防いでいた。

逆に神戸は、残り2分37秒でタイムアウトをとってからは、伊藤の指示で後半の最初同様に「前プレ」で1点を取りに行く。結果的にどちらにもゴールは生まれなかったものの、最後まで攻撃的な姿勢を打ち出した両チームに対して、スタンドのファンは温かい拍手を送った。

神戸はどことやっても接戦になることで有名だ。過去のゲームでも2点差以上ついたことはなく、大半が1点差ゲーム。名古屋とも浦安ともいい試合をする反面、大分にコロッと負けたりもする。実力的にはまだ不安定だといえるだろう。今日もブルノが退場、岸田、フランキが負傷退場しながらも引き分けたことは称賛に値するが、「勝てた試合」(鈴木将方監督)であったのは確か。こういう試合をモノにしなければ、真の意味で強いとはいえない。

「こういった日もある」と語ったのは浦安の"プロフェッサー"シト監督だ。引き分けという結果に満足はもちろんしていないだろうが、大きな不満を抱いている感じにも見えなかった。神戸にもチャンスはあっただけに、内心は勝点1を取れたことにホッとしているのかもしれない。これで勝点で名古屋に並ばれて、得失点差の関係で浦安は2位に後退した。それだけに次の日の最下位・大阪戦では確実に勝点3を取りたかったのだが......。

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