Fリーグ2009・第23節レポート「名古屋」vs「町田」



5 VS 2

【1/31開催 第23節】

完璧なゲームプランを壊した名古屋

Fリーグ23節、名古屋が3連覇をかけて2位の町田との直接対決に臨んだ。名古屋の優勝の条件は勝利した場合のみ。ホームのオーシャンアリーナで、優勝争いを演じた町田に勝って優勝を決める。これ以上ない舞台が整った。

 (文/北健一郎)

Fリーグ23節、名古屋が3連覇をかけて2位の町田との直接対決に臨んだ。名古屋の優勝の条件は勝利した場合のみ。ホームのオーシャンアリーナで、優勝争いを演じた町田に勝って優勝を決める。これ以上ない舞台が整った。
 
名古屋のスタメンは川原永光、北原亘、木暮賢一郎、ブルノ、森岡薫。シジネイが外れている以外はベストメンバーである。一方の町田は満身創痍の状態だった。マルキーニョスが怪我、ジャッピーニャと滝田学が出場停止で3人の主力を欠くという苦しい陣容だった。スタメンは原章展、藤井健太、横江怜、金山友紀、森谷優太。

"飛車角落ち"の町田に残された手段は一つしかなかった。

ジュニオール監督はゲームプランを明かす。「前半は自陣の深い位置に引いて守ってカウンターを狙う。0対0、もしくは1対0で折り返さればと思っていました」。ボールキープでタメを作れるマルキーニョス、前線で攻撃の起点になれるジャッピーニャがいない町田。必然的に攻撃パターンはボールを奪ってからの速いカウンターだけに絞られる。

町田のカウンターは淡白だった。名古屋の守備陣がブロックに来る前に、遠目からシュートを打ってしまう。無理に仕掛けて"カウンターのカウンター"を食らうよりは、打って終わったほうがいい。まずは無失点で行くという町田のゲームプランが見て取れた。

目前優勝を阻止するべく、"弱者の戦い方"に徹した町田。それに対して、名古屋はどこか浮足立っているように見えた。優勝のかかったホームゲームで選手たちには目に見えないプレッシャーが掛かっていたのだろう。早い段階で5ファウルがたまってしまったのだ。

10分、町田は大地悟が倒されて待望の第2PKを獲得。ここで名古屋は必殺仕事人のテーマと共に"PK職人"定永久男が出てくる。町田のほうも驚異のPK成功率を誇る横江怜がキッカー。最大の見せ場となった勝負の軍配は定永に上がった。横江のシュートを右肩に当ててブロックしたのだ。

前半はスコアレスで終了。町田は第2PKのチャンスを逃したが、前半の出来は「ほぼパーフェクト」(ジュニオール監督)。ゲームプランに寸分の狂いもなく、後半に進んだ。

後半開始前、町田のベンチでは藤井健太が白いFP用から水色のGK用のユニホームに着替えると、そのままピッチに出てくる。後半の最初からのパワープレー。奇襲作戦にオーシャンアリーナがざわめく。
 
ジュニオール監督の狙いは、パワープレーでボールを回して時計の針を進めるというもの。昨季、シト・リベラ監督率いる浦安が名古屋相手に用いた戦法である。40分間真っ向勝負をするのではなく、体力を温存する時間を作って、短い時間で勝負を仕掛ける。

しかし、ここまでパーフェクトだった町田のゲームプランにわずかな、ほんのわずかな狂いが生じる。それを名古屋は見逃さなかった。27分、町田は久光邦明がこの日初めてピッチに送り出される。名古屋のキックイン。左サイドから、木暮賢一郎がハーフライン付近の前田喜史にパス。ここで久光の前田へのアプローチが一瞬遅れる。

前田はボールを右前に持ち出すと、寄せてくる前に右足を振り抜く。ボールはゴール左サイドのネットに突き刺さった。この試合で町田が狙っていたのは1点ゲームだったと思う。スコアレスの時間を引っ張って、どこかで1点を取る。それ以外に町田が勝つ術はなかった。

最初の「1点」で事実上ゲームオーバーだった。

同分、ウィルソンが左サイドをドリブルでえぐって(初めて見た気がする)、ゴール前へパス。ニアでつぶれてファーに流れたところに待っていたのは、"持ってる男"木暮だった。瞬く間に2点差をつける。最近の名古屋は試合を読む力がズバ抜けている。その象徴的存在がこの木暮だ。

35分、パワープレーでゴールを空けていた町田のキックインをカットし、北原亘が3点目を楽々決める。スタジアムDJが「安心の3点目!」というと、ホームアリーナに優勝を決定づけた安堵の空気が広がった。

最後まで食い下がる町田は36分、パワープレーで久光→金山友紀のラインから1点を返す。38分、名古屋は前掛かりになった町田守備陣の裏を川原のロングフィードで突いてブルノが追加点。その直後に惜しい場面は作りながらもなかなか決められなかった森岡がダメ押しの5点目をゲットした。

最終的には5-2で名古屋が勝利し、優勝を決めた。
 
記者会見で北原が「昨季までは浦安という絶対的なライバルがいて、勝ち点を取りこぼさなかったが、今季は2位以下のチームが取りこぼしをしてくれたのが大きかった」と語ったように、名古屋の独走に歯止めをかけるチームが現れなかったことが早期優勝の要因となった。

ただし、優勝した今になってみれば、「やっぱり名古屋は強かった」ということになるが、開幕からしばらくは不安定なゲームが目立った。大量の選手の入れ替えや、審判の判定にもナーバスになって大分、湘南という伏兵相手にホームで敗れてもいる。

「昨季までのような大勝はないし、接戦が多かった。リーグ自体のレベルは上がっている。今年の優勝は難しかったです」という北原の言葉は本音だろう。

名古屋にとって転機だったのは怪我人が続出した時期だった。それまではセットを完全固定して戦っていたが、人数不足になってセットを崩して戦わざるを得なくなった。少人数で戦うなかで自然と結束力が生まれた。アジウが試合展開に応じた的確な采配をするようになったのもこの時期からだ。

故障者続出時期を乗り切り、ベストメンバーを組めるようになってからも、調子の良い選手を長く使いながら戦うことで、毎試合コンスタントにチーム力を出せるようになった。そのことが、長丁場のリーグ戦で徐々に調子を落としていくチームとは、正反対の上昇カーブを描く原因となった。

名古屋には素晴らしい環境と優秀な選手がいる。それでも、「いい環境といい選手がいても勝てないチームはある。3連覇という結果を出せているということは、ウチに"何か"があるからだと思う」と北原は胸を張る。

名古屋の次の目標は昨年5月に開催予定で延期されたAFCフットサル選手権だ。アジウ監督からは「全力を尽くして勝ちに行くが、次の大会に向けた研究もしたい」と強気なコメントは聞かれなかったが、間違いなくいえるのは、名古屋は8カ月前よりも格段に"いいチーム"になっているということだ。

【本エントリの著者】
北健一郎
URL: http://sportswriter.at.webry.info/
1982年7月6日生まれ、北海道旭川市出身。小学生の頃から雪でグラウンドが使えなくなる冬は室内サッカーをしていたが、サッカーもフットサルも大してうまくならず、ライターの道へ。
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