国際親善試合:日本対イタリア 第2戦(9/24) キタケンレポート

国際親善試合 2009/09/24 大阪市中央体育館(大阪)

3 VS 4


"スペクタクル"と"永遠の課題"

 (文/北健一郎)

9月24日、イタリアとの第2戦は大阪市中央体育館で行われた。この会場で試合をするのは、2007年アジア選手権の決勝以来のこと。イランに敗れて準優勝に終わった"因縁の場所"で、ミゲル・ロドリゴ監督率いる日本代表は国内初白星を目指してイタリアと戦った。

キタケンオリジナル選手採点付き!

日本のスタメンはGKが川原永光から地元・大阪の藤原潤に代わった以外は第1戦と同じ、上澤貴憲、村上哲哉、木暮賢一郎、ブルノ。イタリアのベンチ入りメンバー第1戦より2人増えて17人(!)になった。ワールドカップの正GKフェレルが先発し、フォルチ、ジアソン、モレイロ、ロマーノがスタメンに名を連ねた。

ちなみに、日本はキャプテンが第1戦と第2戦で違う。第1戦は木暮が、第2戦は小宮山友祐がキャプテンになった。これは木暮と小宮山の"経験者"への「お前たちがチームを引っ張ってくれ」というメッセージだろう。また、名古屋の試合では名古屋所属の川原を起用し、大阪の試合で大阪所属の藤原、神戸所属の村山竜三(後半から)を起用しているのは偶然ではないはずだ。

ミゲル監督は就任会見での「日本代表は複数のクラブから選ぶ」発言といい、モチベーションを上げて、選手をその気にさせるのがうまい。人心掌握術は監督の重要な能力の一つだが、こういった細かいところまで気配りが行き届いているのは好印象だし、日本人向きだと感じるところだ。

日本は5分、右CKから木暮がニアに出したパスをブルノが合わせる。これはフェレルがストップ。6分には左サイドからブルノが得意のシザーズからカットインシュート。このシュートは木暮に当たってしまったが、ファーストセットがシュートを打ったことで、チーム全体が勢いに乗った。

6分が過ぎたところで日本はセカンドセットに。小曽戸允哉のところに地元・大阪の松宮充義が加わり、小宮山、北原、星翔太というメンバー。小曽戸と松宮は"ドリブラー枠"である。1対1でドリブルを仕掛けられる選手のことで、この枠には他にブルノ、皆本晃、今回は外れたが浦安の稲葉洸太郎などがいる。日本の最激戦区といっていいかもしれない。

日本は7分、イタリアのシュートをキャッチした藤原が、出足よく裏に走った星にスロー。星はファーストタッチでアウトサイドで中に切り返し、相手の逆を突いてシュート。これはイタリアの守護神・フェレルに弾かれるが、藤原の精度の高いスローと星の素早い動き出しが噛み合ったプレーだった。

それから2分後の9分、同じように藤原のスローを星が左の高い位置で受けると、1対1で縦にかわしてゴール前のニアスペースに入ってきた北原にパス。北原の前に入ってカットしようとした相手に当たったボールは、コースが変わってイタリアゴールへ。日本がラッキーな形で先制点をゲットした(得点者は星)。

場内MCのアナウンスがまだアリーナに響いているうちに、日本に次のゴールが生まれる。2点目は高い位置でボールを奪った星のシュートのこぼれ球を、北原が左足で詰めたもの。日本が世界3位のイタリアから2点を先取するという予想外の展開に、興奮と戸惑いが入り混じったような雰囲気に包まれた。

しかし、フットサルにおいて2点差はセーフティーリードではない。残り時間が30分以上あることを考えれば、日本がこのまま逃げ切る展開は予想しにくかった。

12分、ハーフライン左側に落ちた浮き玉のボールに走り込んだカルデロッリは、追いかけてきた上澤を弾き飛ばしてマイボールにすると、前に出てきたGKとの1対1を落ち着いて決める。浮き玉をクリアするのか、体を入れてつなぐのか、上澤の判断が一瞬遅れたところを突かれてしまった。

17分、今度はピヴォ当て。イタリアはピヴォは大きい。8番のオモリは185センチ、9番のモレイラは186センチある。このピヴォに対して、日本は基本的にマークの強い上澤、小宮山、北原、村上がつくようにしていたが、「小曽戸がちょっと遅れて戻ってきていたから、僕が前に抜けた選手についた」(上澤)ことで、日本のゴール前で小曽戸vsモレイラというミスマッチが起こった。

すかさずベルトーニがモレイラの足元にボールをつけて、落としたボールをシュートしようと走り込んでいく。これをオトリにしたモレイラはゴリゴリと反転して左足でシュート。これが決まってイタリアが2点目をきめた。

大型ピヴォと日本の小さい選手のミスマッチ。これは世界の相手と戦うときに、体格面で劣る日本にとって避けて通れない課題になるだろう。ミスマッチができないようにするには完全マンツーマンしかないが、それでは攻撃時にマークを捨てて前に出ていくことができない。ミゲル監督が「小曽戸をすぐに大きくすることはできない」と冗談混じりに語ったように、日本にとって悩ましい問題だろう。

前半終了間際には3点目を献上する。ゴールほぼ正面の位置のFKで、オモリが壁の間を狙ってシュートを打つと、GK藤原と木暮のスキ間を通って直接決まってしまう。ボール1個分のコースを通したオモリのシュートは見事というしかないが、本来はあってはならないゴールである。正確なスローとフィードで攻撃面で目立った藤原だったが、総合的にはマイナス面のほうが大きくなってしまった。

後半の立ち上がり、日本はまたしてもミスから失点を許す。23分、イタリアのフォルチが後方からゴール前に浮き玉のパス。このボールをクリアしようとGK村山(後半から出場)が飛び出したが、オモリがブラインドになって目測を誤って反らしてしまう。あっけない形で喫した4失点目に観客席からはため息が漏れる。

1点目と2点目はある程度仕方がないところもあるとはいえ、3点目、4点目はGKのミスという側面が強い。ミゲル監督が「日本の課題はGK」と語っていたが、この2失点はその言葉を裏づけるものになってしまった。ただし、強豪国相手にはちょっとしたミスが命取りになるということを学べたのは、藤原、村山にとっては大きな経験となったに違いない。

そもそも、日本のGKは川原が2003年からほとんど1人で守ってきたので、彼以外のGKは圧倒的に国際舞台の経験が足りない。こういったミスをしても、粘り強く試合で使い続けていくしかない。

その後は日本は1、2失点目に絡んだ上澤が、素晴らしいパフォーマンスを見せた。記者席ではサッカー日本代表の中澤にかけて「ボンバー上澤」という言葉が飛び出すぐらい、相手ピヴォの前に出てヘディングでクリアするシーンが目立っていた。

一方でキャプテンマークを巻いた小宮山にはやや不安が残った。前でプレスを掛けてコースを限定した状態でボールを蹴らせても、カットできずに相手に背負われてしまうのだ。そうすると相手に高い位置で起点を作られるので、前の選手が戻らなければならなくなる。

35分、2点差の日本はタイムアウト。ここから何度か合宿で練習してきたというパワープレーをスタートした。GKは上澤、左にブルノ、右に村上、左奥に木暮、右奥に初招集のレフティー、菅原和紀というメンバーだ。36分、上澤のパスが引っかかるが、村上が拾ってゴール左の木暮へシュートパス。これを木暮がうまく流し込み、日本が1点を返す。

合宿で練習してきたのは、右奥の菅原にパスを当てて、そこから菅原がダイレクトで中に折り返すという形だった。菅原は左利きなので、右サイドの角に置けばダイレクトで中へパスを出せる。それを買われての起用だったが、狙っていた形に持っていくことすらほとんどできなかった。

「GKのところにあんなに寄せてくるとは思わなかった。こっちがボールをある程度持っている状態を想定して練習していたから」と菅原が驚いたように、イタリアはGK上澤に激しくプレスを掛けてきた。上澤の利き足である右足側に立っていたので、右のコースが消され、左のブルノへのパスが増える。ブルノから菅原にナナメに出すのはかなり難しい。GKにプレスに来るということは、どこかで1人が空くのだが、イタリアの守備が一枚上手だった。

また、マイボールになったらイタリアはパスを回して時間を使うため、日本がパワープレーをする時間はどんどん減っていく。焦った日本が前からボールを取りに行けば、シンプルに裏のスペースに走り込み追加点を狙いにいく。ラスト10秒、木暮のパスからブルノが打ったシュートもGKに止められ、タイムアップ。日本が3-4で逆転負けを喫した。

記者会見でのミゲル監督の第一声は「素晴らしい試合ができた」。大阪市中央体育館を埋めた2776人のお客さんにとって、両チーム合計7ゴールが決まった試合展開はスペクタクルなものだっただろう。

日本はイタリアと真っ向勝負を演じた。お互いに高い位置からプレスを掛け合い、攻守が素早く入れ替わり、シュートシーンがたくさん訪れる。こういったゲームをすれば、「また見たい」と思ってくれるファンは増えるだろう。ミゲル監督は国内デビュー戦をそんな試合にしたいと思っていたのではないか。

一方で「面白かった」と喜んでばかりではいけない。カウンター時のリスクマネージメント、大型ピヴォとのミスマッチ、GKのレベルアップ、パワープレーの精度を高める。これらは日本フットサルが長年抱える問題点でもある。国内デビュー戦で改めて浮き彫りになった"永遠の課題"に、38歳の青年監督、ミゲル・ロドリゴがどのように挑むのか。これからお手並み拝見といったところだろう。

キタケンオリジナル選手採点(10点満点、平均点は6点)

1 川原永光 (GK) - 出場なし
12 村山竜三 (GK) 5.5 後半立ち上がりの失点シーン以外は無難なプレー
14 藤原潤 (GK) 5.0 1点目を演出するも、直接FKを決められたのは痛い
10 木暮賢一郎 6.0 3点目をゲット。味方と意図が食い違いピンチを招く場面も
8 上澤貴憲 6.5 2失点に絡んだのはマイナスだが、後半のプレーは◎
4 小宮山友祐 5.5 大型ピヴォとのマッチアップに苦戦する場面が目立った
5 村上哲哉 6.0 第1戦よりも自信を持ったプレー。3点目をアシストした
2 菅原和紀 5.0 Fリーグとのスピードの違いに戸惑い、ミスが目立った
7 松宮充義 5.0 ワンツーでチャンスを作った以外は、本来のプレー出せず
3 北原亘 6.5 守備面はもちろん、積極的に前に出る動きが光った
6 小曽戸允哉 6.0 短い出場時間でもドリブル突破でチャンスを作った
13 ブルノ 6.0 ドリブルから積極的にシュート打つが、パス回しに課題
9 星翔太 7.0 2試合を通じて出色の出来。決定力を高めればエースだ
11 渡邉知晃 5.5 反転シュート打ったが、ボールを引き出す動きが少ない
15 皆本晃 - 出場時間短く、採点なし

 

【本エントリの著者】
北健一郎
URL: http://sportswriter.at.webry.info/
1982年7月6日生まれ、北海道旭川市出身。小学生の頃から雪でグラウンドが使えなくなる冬は室内サッカーをしていたが、サッカーもフットサルも大してうまくならず、ライターの道へ。
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