[Fリーグ]プレシーズンマッチ「府中vs浦安」キタケンレポート

伸びしろがあるのはどっち?

7月9日に駒沢体育館で行われた府中と浦安によるプレマッチ。新加盟チームの府中はどれぐらいやれそうなのか、監督交代と戦力刷新を行った浦安のチーム状況は? 見どころがたくさんあるこの試合の模様を、キタケンが詳しくレポートする!

(文・北健一郎)

「公開練習試合みたいな雰囲気ですよね」

 ハーフタイムに横に座った記者が漏らした言葉が、この試合の性質をピタリと言い表しているように思う。8月22日の開幕まで1カ月以上ある中で行われた今回のプレマッチ。府中も浦安もチームとしての完成度はまだまだといったところで、ゲームのクオリティーとしては正直高くはなかった。1000円というこの日のチケット価格を高いと感じるか、安いと感じるかは判断の分かれるところだろう。

 今季からFリーグに新規参入する府中は難波田治、宮田義人、河原優がケガのため欠場。スタメンはGK富澤孝、清水誠、上澤貴憲、皆本晃、小山剛史。2年連続でFリーグ2位の浦安はGK渡辺博之、市原誉昭、中島孝、諸江剣語、星翔太というスターター。新外国人のGKパコはメンバーに入っていない。

 試合開始から目立ったのは浦安の頻繁な選手交代だった。一番最初に交代したのは市原だったが、その前のプレーで相手に囲まれてボールを奪われていた。その後も、府中の皆本のマークについていて2本連続でシュートを打たれた荒牧が出てすぐに引っ込められるなど、ミスをすれば即交代させられる感じだった。

 この交代についてセサル監督は試合後にこのように説明した。「交代は罰を与えるためのものではなく、チームにとって重大なミスだということを教えるためです。チームのコンセプトを理解していないミスをしたときに交代しています。それに気づかせたらピッチにもう一度送り込んでいます」。

 前任のシト・リベラ監督の後を継いで、セサルが浦安の新監督に就任したのは、たった1カ月前のことだ。そのため、チームの新しいコンセプトを体で覚えさせるために、セサル監督は「ミス→即交代」という懲罰的な交代策をあえて行ったのだろう。

 試合に話を戻そう。4分、府中は小野大輔が昨年9月30日のワールドカップ・ブラジル戦以来、約9月ぶりに実戦のピッチに立った。昨季まで所属していた"古巣"浦安を相手に、小野は持ち前のボールキープでパス回しの起点を作って、右足の強烈なシュートでゴールを狙っていく。

 前半の半ばを過ぎたぐらいから、どちらも中盤でボールを奪っては、つなごうとして失うという、ガチャガチャとしたプレーが増えてくる。これはチーム作りの順番が関係している。どこのチームもまず守備からチームを作る。そのため、現段階では守備の約束事はできていても、攻撃はアドリブによるところが大きいため、どうしても守備のほうが勝ってしまうのだ。前半はスコアレスのまま折り返した。

 後半、府中はGKを富澤から全日本チャンピオン・フウガから移籍した石井秀樹にチェンジ。石井はマイボールになるとスルスルと上がっていてパス回しに参加する。前半は浦安のプレスをかけられてすぐにボールを出したり、GKに戻してロングボールを蹴っていた府中だったが、足元の技術に自信を持つ石井がGKに入ったことで、ある程度プレスを回避できるようになった。

 それでも、後半多くのチャンスを作ったのは浦安のほう。23分、左サイド、星からのシュートパスを中島が合わせるがミートできず。27分、左から中にドリブルした星がバランスを崩しながらもシュートするもGKがブロック。30分には、ゴール前で中島が星のボールをかっさらうようにシュートするがGKに止められる。

 相手の猛攻を凌いだ府中は30分、浦安が裏のスペースに出したパスをカットしようと飛び出したGK石井が「相手のGKが出ているのが見えたので」とゴールを狙って"クリア"。美しい放物線を描いたボールが浦安ゴールに吸い込まれて、よもやの形で府中が先制する。「決めたのは超攻撃的ゴレイロ、石井秀樹!」の場内アナウンス。

 だが、ホームチームのリードは3分で終わってしまう。33分、小宮山が右の稲葉洸太郎にパスを出して前方のスペースへダッシュ。稲葉からの縦パスをトラップした小宮山が中に折り返したところに詰めたのは平塚雅史! 浦安がお手本のような"パラレラ→ファー詰め"で同点に追いついた。

 この後、浦安はラスト1分のところで市原をGKにパワープレーをしたもののゴールには結びつかず。1-1のドローでタイムアップとなった。

 こういった試合では、結果を論じることはほとんど意味がない。大事なのは開幕に向けてどのような収穫があって、どんな課題があったかをあぶり出すことだろう。

 浦安はシト監督のチームのベースを一度壊してイチから作り直しているという印象を受けた。セサル監督は「選手たちはやるべきことをやろうとしている。これ以上のことを求めるのは要求しすぎだと思う」と語ったように、現時点では一定の手応えをつかんでいる様子だ。

 セサル監督が満足感を得たのは主に守備面だろう。全体を通じて前からのプレスがハマっていて、個人のマークミス以外でやられたシーンはあまりなかった。ただし、これは府中のプレスへの対応能力の低さを差し引くべきだろう。府中の上澤が「課題」と語ったことこそ、プレスをかけられたときのボール回しだったからだ。

 府中は前半、浦安にプレスをかけられるとほとんどボールをつなげなかった。安心してボールを預けられるのは上澤ぐらいで、他の選手はプレスをかけられると、すぐに外に蹴り出したり、GKに戻したりしてしまう。後半マシになったのもGKの石井がパス回しに参加したからだ。これでは1試合を通じて安定して試合を運ぶことはできない。これはFリーグ開幕までに最優先で取り組んでいくべきポイントだろう。

 また、府中は清水、上澤、皆本の出場時間が極端に長かった。これはフィクソの難波田、バランサーの河原、ドリブラーの宮田という彼らの控えとなる選手がケガでいなかったからだ。プレマッチで特定の選手をこれだけ引っ張ったことから、府中の課題は「選手層」だということも見えてくる。
 
 この試合をコンセプトの浸透のためと割り切り、一定の成果を見せた浦安。ゴールはラッキーな1点のみ、選手層とパス回しの課題が浮き彫りになった府中。1-1というスコアだけ見れば僅差だが、この試合の中身を見る限り、開幕までの1カ月での伸びしろがあるのは浦安ではないだろうか。府中は準優勝チームと引き分けた結果に満足せず、課題克服に取り組むことが求められる。

(了)

【本エントリの著者】
北健一郎
URL: http://sportswriter.at.webry.info/
1982年7月6日生まれ、北海道旭川市出身。小学生の頃から雪でグラウンドが使えなくなる冬は室内サッカーをしていたが、サッカーもフットサルも大してうまくならず、ライターの道へ。
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