ワールドカップブラジル2008準決勝・「スペイン 対 イタリア キタケンレポート!
Tweetスペインとイタリアは4年前のファイナリストである。
両チームの強みは組織的なディフェンスだ。イタリアはパラグアイ戦の4-2、2次リーグイラン戦の5-5以外は2失点以上していない。スペインも例外はイランとの3-3だけ(そう考えるとイランは本当にすごい)。スペインはルイス・アマドとキケ、イタリアはフェレールとグラナというチームの柱がしっかりしているのも共通点だ。
文・北健一郎氏(ストライカーDX)
2008年10月16日・リオデジャネイロ(ブラジル)・準決勝
![]() スペイン代表 |
1-0 0-1 1-0 1-1 |
![]() イタリア代表 | ||
| 3-2 |
50分間の激闘に不釣合いな結末
スペインとイタリアは4年前のファイナリストである。
両チームの強みは組織的なディフェンスだ。イタリアはパラグアイ戦の4-2、2次リーグイラン戦の5-5以外は2失点以上していない。スペインも例外はイランとの3-3だけ(そう考えるとイランは本当にすごい)。スペインはルイス・アマドとキケ、イタリアはフェレールとグラナというチームの柱がしっかりしているのも共通点だ。
だが、攻撃のアプローチは正反対といっていい。スペインは攻撃も組織的だ。ダニエル、マルセロという"違い"を作れる選手はいるが、彼らも基本的にはチームの中のピースとしてプレーする。逆にイタリアは攻撃は個人能力に委ねられている。フォーリャ、セコの独力突破=戦術という感じだ。
攻撃面を切り取れば、組織のスペインvs個人技のイタリアという構図を見出すこともできる。
スタメンは、スペインがGKルイス・アマド、トーラス、ハビ・ロドリゲス、キケ、マルセロ。イタリアがGKフェレール、ペジェグリーニ、アシス、ファビアーノ、モルガド。
4分、スペインが前からプレスをかけて、こぼれたボールをダニエルが蹴り込み、スペインが先制する。インテル・モビスタでプレーするダニエルは不思議な選手だ。フワフワしているというか、プレーに力感というものがまるでないのだ。普通の選手なら打ち急いでGKに当ててしまいそうなこのシーンでも、まるで遊びのゲームかのように落ち着いて浮かせて蹴った。
スペインの攻撃は基本的にFP4人が横に並んだ状態からスタートする、"クワトロ"と呼ばれるパス回しだ。右サイドに左利きのマルセロ、左サイドに右利きのハビ・ロドリゲスを置いて、ボールを回しながらスキあらば彼らがカットインシュートも打っていく。
イタリアは攻撃はアドリブでプレーしているが、それだけにスペインとしては相手のプレーを読みづらい。だから、ゴール前でダイレクトパスが2、3本連続でつながるとマークが外れてチャンスになる。前半終了24秒前、アシスのスルーパスをフォーリャがゴール右前からボレーで合わせるもゴール上に外れる。
前半はこのままスペインの1点リードで終了。ここまでは一進一退といっていい内容だ。
後半、イタリアが同点に追いつく。決めたのは"フットサル界のマラドーナ"フォーリャだ。26分、左サイドでボールを持つと2人の間をゴリゴリッと突破し、3人目の相手とGKを右にかわして右足でシュート。これがGKのカバーに入った相手の股を抜けてゴールイン。股抜きも合わせれば5人抜きゴールだ!
このゴールがイタリアに火をつけた。30分にはアシス、フォーリャが2本連続シュート。ルイス・アマドがこれを弾き返すが、31分にもFKからグラナが際どいコースを狙っていく。
この時間帯からフォーリャが出てくればキケが出てくるようになった。キケはスペインの中でも最もディフェンスがうまい。スペインとしては、フォーリャを止めることがイタリアを止めるための最重要事項だと判断したのだろう。
フォーリャに触発されて乗ってきたのがもう一人のドリブラー、セコ。33分にゴール前でボールを受けて左にかわして惜しいシュート。スペインは34分、オルティスのパスをマルセロが軸裏でシュートするが決まらない。
38分、フォーリャが左サイドの1対1で縦に浮かしてかわそうして引っ掛けられて、ファウル。ブザーが鳴る。スペインの5ファウルだ。これ以降スペインがファウルをすれば第2PKになる。つまりディフェンスで強くいけなくなる。スペインにとってはピンチだ。
ゲームは1-1のまま前後半5分ずつの延長戦へ。フットサルでは延長戦は後半のファウル数が持ち越しになる。この点ではイタリアのほうが優位に立っているといっていい。
それでも延長前半終了30秒前、勝ち越し点をゲットしたのはスペインだった。縦パスを右サイドで受けたフェルナンダウが、角度のない場所からゴール左上に強烈なシュートを突き刺したのだ。
延長後半が半分を経過したところで、イタリアはグラナをGKにパワープレー。するとラスト1分44秒、ゴール中央からグラナがトーキック。これがルイス・アマドの壁を壁を破ってゴール右下に決まる! TVカメラの前で歓喜のダンスを踊るグラナ。
だが、ゲームの決着は意外な形でつくことになる。スタートは試合終了まで10秒を切ったところだった。
イタリアベルトーニのパスを中盤でカットしたスペインのマルセロがドリブルから、左前方のキケへパス。キケがマイナス方向にリターンしたボールが、自陣方向に全速力で走っていたフォーリャに当たる。ポストに跳ね返ったボールが、そのままのスピードでゴールに突っ込んできたフォーリャに当たってゴールイン......だが、すでにタイマーの時計は「00:00」になっている。
審判の判定はゴールイン。スペイン選手が大喜びするが、イタリアは審判に猛抗議する。彼らの言い分はゴールが決まる前にすでに試合は終わっていたというもの。記者席のTVモニターでは、時間表示つきで繰り返しゴールシーンの映像が流れたが、決まったのは明らかに「0」になったあとだ。
ピッチ上ではスペインとイタリアの両陣営がオフィシャル席を取り囲み、お互いにゴール(スペイン)、ノーゴール(イタリア)を主張しあっている。電光掲示板の得点表示はまだ「2対2」のままで変わらないことも混乱を増幅させた。オウンゴールの当事者になったフォーリャはイタリアゴール裏の看板の前で涙目になって体育座りをしている。
スペインは選手が引き上げるが、イタリアはピッチに残ったまま円陣を組む。スタンドのファンは「イタリア!」コール。それに応えるイタリア。さあ、どうなる!?
ゴールシーンから30分ほど経ったところで、審判団が戻ってくる。判定はゴールだった。確かにあの瞬間にレフェリーが試合終了前にゴールを割ったかどうかを完璧に判断するのは不可能に近い。フットサルにビデオ判定が導入されていない以上、その場で審判が下した判定が尊重されるのは正しい。
ただし、それでもタイムアップ後にゴールが決まったのは確かである。フットサルがカウントダウン式でプレーイングタイムで行われている競技である以上、このようなことはこれからも起こる確率は十分、いや絶対にある。FIFAが今回のゴールをどのようにとらえて、今後に生かすのか注目される。
ブザービーターがないフットサルでは、例えタイムアップと同時にゴールが決まってもキックオフをしなければならない。イタリアはキックオフをした時点でゲームが成立し、自分たちの敗北が決まることになる。あまりにも辛いキックオフ。イタリアのキャプテン、グラナがボールを空中に大きく蹴り上げたとき、長い長いゲームに終わりを告げるブザーが鳴り響いた。
(了)






北健一郎



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