ワールドカップブラジル2008決勝・「ブラジル 対 スペイン キタケンレポート!

正真正銘の決勝戦

 "事実上の決勝戦"と呼ばれた前回大会の準決勝から4年。ブラジルとスペインの2強対決が、決勝という最高の舞台で実現した。世界一を決めるにふさわしいハイレベルな頂上決戦は、4年前と同じようにPK戦で決着した。
【ワールドカップブラジル2008・キタケン現地マッチレポート】
 文・北健一郎氏(ストライカーDX)

2008年10月19日・リオデジャネイロ(ブラジル)・準決勝

ブラジル代表
0-0
2-2
0-0
0-0
4(PK)3

スペイン代表
2-2



  正真正銘の決勝戦


 "事実上の決勝戦"と呼ばれた前回大会の準決勝から4年。ブラジルとスペインの2強対決が、決勝という最高の舞台で実現した。世界一を決めるにふさわしいハイレベルな頂上決戦は、4年前と同じようにPK戦で決着した。

 ブラジルは準決勝で負傷したシュマイケルとマルキーニョが、GKチアゴ、ガブリエル、レニージオと共にスターティングメンバーに名を連ねる。一方のスペインは準決勝イタリア戦で左ヒザを傷めたダニエルがベンチ外。GKルイス・アマド、キケ、トーラス、ハビ・ロドリゲス、マルセロが決勝のスタメンとしてピッチに立つ。

 スペインはオールコートディフェンスをするが、ボールを"奪いにいく"というよりは"フタをする"という言い方がしっくりくる感じ。ボールホルダーの前センター方向に立つ、つまり"縦切り"のディフェンスで相手のプレー選択肢を横パスに限定させる。

 ブラジルはボールはポゼッションできるものの、ハーフラインを突破することはなかなかできない。また、特筆すべきはスペインのマークの受け渡しだ。相手のポジションチェンジについていくのか、受け渡すのかの状況判断、タイミングなど、どれをとってもスムーズで無駄がない。彼らのディフェンスの破綻が少ないのは、この受け渡しのオートマティズムが最大の理由だろう。

 4分、ブラジルはファーストセットをアリ、シソ、ビニシウス、ファルカンへまとめてチェンジ。一方のスペインのほうは1人、2人ずつ入れ替えて、ゆるやかにセカンドセットに移行する。

 この交代の仕方はブラジルとスペインで大きく異なるところだろう。ブラジルはいわゆる"セット交代"をする。基本となる4人×2セットを作って、45分間隔で回しつつ、状況に応じて組み替えたる。スペインもセットのような組み合わせはあるが、4人全員をまとめて交代することはほとんどない。相手の出ている選手や試合の状況に応じて交代させていく。

 4分、ビニシウスの縦パスをゴール前に入ったファルカンがヒールシュート。意表を突くプレーだったが、GKがブロック。8分、ブラジルに決定的チャンスが訪れる。シュマイケルが左からドリブルしていくと、右から近づくガブリエルとスイッチ......と見せかけて、そのままドリブルし、右前方のレニージオにパス。レニージオがゴール前に入ったシュマイケルに折り返すが、シュートは枠を捉えられず。10分にもレニージオのパスからシュマイケルがミドルを打つが止められる。

 15分にはレニージオのインターセプト→シュマイケルへのパスから3対1のカウンター発動。だが、中央のシュマイケルのパスが右を走るレニージオの後ろにわずかにそれてスピードダウン。スペイン選手に戻る時間を与えてしまってゴールに結びつけられない。

 16分、ブラジルは2試合の出場停止が明けたベットンを投入。彼を投入するのは、すなわちピヴォ当てをする合図だ。相手を背負ってキープすれば、体の厚みと懐の深さがあるベットンがボールを奪われることはほぼない。そのため、他の選手は迷わずに追い抜いていくことができるし、それを使って自分で反転から打つこともできる。

 ブラジルとしては、ベットンを高い位置に置いてシンプルに使うことによって、スペインのコンパクトなディフェンスを間延びさせるという狙いがあったのではないだろうか。

 前半はスコアレスのまま終了。この2チームのように実力が拮抗していると、きれいに崩した形からのゴールというのは、なかなか生まれないものだ。

 後半開始4分のブラジルのゴールは、いわゆる"交通事故"と呼ばれる類のものだった。左CKをマルキーニョがゴール前に思い切り蹴り込むと、いちばん手前で膝立ちでコースに立っていたスペインボルハの頭に当たり角度が変わってゴールイン。名手ルイス・アマドでもこれはどうしようもない。

 それでも27分、スペインはカウンターからマルセロが左に出したパスを、レフティーのトーラスが相手の出す足より一瞬早く打ち抜く! 左足アウトで打ったシュートは、GKチアゴが反応できないほどのスピードでニアサイドに突き刺さり、1-1。

 36分のブラジルの2点目は1点目同様にCKから。右CKをビニシウスがゴール中央のシソへ浮き球でパス。これを胸トラップから左のレニージオにつないでダイレクトボレー。GKに弾かれたボールをレニージオが再度打つが、またもルイスアマド。このこぼれ球をアリが右につないで、今度はビニシウス! "3度目の正直"でようやく決まった。

 世界一のGKと呼ばれるルイス・アマドはマンガのようなGKだ。キャプテン翼の若林君実写版というか、ペナルティエリアの外からのシュートはまず入らないし、クリーンな形から打ったものは大体止められる。彼の牙城を破るには1点目のように"交通事故"のようなゴールか、このように何本も連続で打つ作業が必要になる。

 1点ビハインドを背負ったスペインは、すぐさまキケをGKにしてパワープレー。そしてラスト1分32秒、キケのパスをオルティスが縦に入れて、フェルナンダウがダイレクトで中へ折り返す。ブラジルのガブリエルがスライディングでコースに入るが、彼に当たったボールをアルバロがプッシュして、またしても追いつく!

 このまま2-2で後半終了。準決勝のスペインイタリアに続いて、今大会2試合目の延長戦突入となった。どちらもファウルカウントは「5」。ファウルをすれば即第2PKになるという状況だ。

 延長戦では、前半終了直前にレニージオが右から2人の間を抜いてループシュートを放つも惜しくもゴール上。スペインはCKなどセットプレー以外はリスクをかけて攻めない。PK戦では4年前は自分たちが勝っているのは彼らに余裕を与えたのだろう。10分間ではどちらにもゴールが生まれず、2大会連続でPK戦で勝敗が決まることになった。

 ここでブラジルはゴレイロのチアゴを、控えGKのフランクリンにスイッチ。今大会、フランクリンが出場したのは日本戦のみ。このペセ采配が吉と出るか凶と出るか。

 PK戦。ブラジルの1人目マルキーニョ、スペインのキケはともに成功。2人目もウィルデ、オルティスが決める。ブラジル3人目シソがど真ん中に豪快に決めた後の、スペインのキッカーは1点目を決めたトーラス。左足のシュートはフランクリンの読みと合ってしまい失敗。

 4人目はレニージオ、アルバロの両者が落ち着いてゴールに沈める。"これを決めれば優勝"というブラジルの5人目のキッカーはアリ。会場中の視線が注がれる中で打ったシュートは、ルイス・アマドがセーブ。ブラジルファンの落胆のため息がこぼれる。

 このアリの失敗を帳消しにしたのがGKのフランクリンだった。スペイン5人目のキッカーマルセロが右に打ったシュートを、3人目のトーラスのときと同じように止める――この瞬間、ブラジルの2大会ぶり4度目の優勝が決まった。

 4年に1度のワールドカップは開催国ブラジルの優勝という"ハッピーエンド"で幕を閉じた。改めて感じるのは、4年前から変わらずブラジルとスペインの2チームの実力・完成度が突出しているということ。

 4年後もまたブラジルとスペインのゲームが頂上決戦と呼ばれるのか、それとも2強時代に終止符を打つような国が現れるのか――。今後のフットサルの発展性を考えると、彼らに肩を並べて、そして打ち負かすような、第3、第4の優勝候補の台頭が待たれる。

(了)

【本エントリの著者】
北健一郎
URL: http://sportswriter.at.webry.info/
1982年7月6日生まれ、北海道旭川市出身。小学生の頃から雪でグラウンドが使えなくなる冬は室内サッカーをしていたが、サッカーもフットサルも大してうまくならず、ライターの道へ。
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