<バルドラール浦安 vs デウソン神戸>
(文・写真:北健一郎)
| バルドラール浦安 | 1-0 | デウソン神戸 | ||
| 0-1 | ||||
| 1-1 |

もう絶対に負けられないバルドラール浦安
まさにFリーグ台風の目となったデウソン神戸
肉弾戦の末の"痛み分け"
優勝に一縷の望みをかける2位の浦安と、4位以下との勝点差がつまってきた3位・神戸の上位対決は、激しい肉弾戦の末に"痛み分け"のドローとなった。
浦安にとっては痛すぎる引き分けだ。名古屋が大分に10-1(!)で勝ったため、勝点差は7に開いて、これで優勝の可能性はほぼ消滅。一方の神戸にとっては、2位チームを相手に勝点1を上積みできたことは、ポジティブな要素が大きいだろう
ここまでの戦績は、神戸ホームの2節は浦安が3-2で勝利、長野セントラルの12節はスコアレスドロー。浦安が1勝1分けで勝ち越してはいるが、試合内容を見る限りはどっちに転んでもおかしくなかった。ここから一つの引き分けも許されない浦安にとって神戸は、厄介この上ない相手だ。
スターターは、浦安がGK川原永光、平塚雅史、清水誠、岩本昌樹、高橋健介。神戸はGK村山竜三、ハタケヤマ・ブルノ・タカシ(ブルノ)、伊藤雅範、小川亮、原田浩平。
キックオフから数分見て感じたのは、神戸の選手の体が重たそうだな、ということ。特にブルノと原田の突破に、いつものようなキレが感じられない。それについて原田は「バス(に乗っている時間)が長かった」ことを理由の一つに挙げた。神戸のアウエー遠征時の移動手段は基本的にバス。しかも、到着したのが前日の夜遅くだったのだという。"移動疲れ"が体に残っていたのは想像に難くない。
浦安のディフェンスが神戸の攻撃の軸となる2人を相当警戒していたことも大きい。
浦安の警戒心が顕著に現れたのが、原田が得意な左サイドでボールを持ったとき。必ずアプローチ役とカバーリング役の2人をつけて、タッチライン際に追い込み、得点率の最も高いカットイン→右足シュートの選択肢を消す。仮に縦に突破にかかってきた場合でもシュートコースはニアに限定される。これに関しては川原が責任を持って止める。
とはいえ、原田とブルノにマークが集中するということは、他の選手がフリーになるということでもある。しかし、神戸は他のポジションでの数的優位をうまく使えなかった。このチームの場合は"勝負すべき選手"がボールを持ったときは、ドリブルするスペースを消さないように、あまり近づき過ぎないのが約束事になっている。彼らの突破力を前提にしたこのやり方は、ドリブル勝負で勝てないと成立しない。
伊藤が「攻撃が単調だったかもしれない」と語ったように、この日の神戸の攻撃は止まった渋滞からのものが多く、変化に欠けた感は否めない。
とはいえ、浦安が完璧に止められていたかといえばそうではない。実際、4分には右サイドで抜け出しかけた伊藤を引っ掛けた平塚に、11分には原田へのスライディングで小宮山友祐に、「黄色い紙」が提示されている。この2つのプレーに対しては、今日の試合で審判を引退する鈴木亮哉審判からレッドカードを出てもおかしくなった。
試合開始直後から、何となく不穏な空気が漂っていたが、原田へのファウルに激昂した伊藤が小宮山に詰め寄り、一触即発になるシーンも。
18分、神戸は田中智基に警告。その直後、藤井健太とのワンツーで抜け出した稲葉洸太郎をペナルティーエリアの中で引っ掛けたのは、またしても田中。これには当然2枚目のカードが出て、前回の対戦に引き続き神戸に退場者が出る。
PK。浦安にとっては先制のチャンスだ。だが、キッカー稲田祐介のシュートは左に飛んだ村山が読みきって止める!
前回は神戸がFP3人になって数的有利の時間帯に決められず、それがドローの大きな要因となった浦安。今回はその体験を教訓に、ボール回しにあまり時間を使わず、ブロックの外からでもシュートをどんどん打っていった。それが実ったのが前半残り54秒、稲葉がペナルティーエリアの外からミドルシュートを突き刺した。
後半、「2点目が決まれば試合は終わると思っていた」(シト監督)浦安は、後半の4分過ぎから小宮山、藤井、稲葉、稲田のセットで11分までプレー。ここで決めたいところだったが、稲田が神戸の山元に厳しくマークされたこともあって、突き放すことはできず。
このセットが代わったところで、浦安は「1点を守りきる」モードに切り替えた。小宮山、市原を中心に、神戸の攻撃を跳ね返していく。神戸としても後半10分から入ったスタメンセットで追いつきたかったが、点を取れないまま16分に交代する。これから先の時間でブルノや原田を使えるとしても1、2分。神戸は苦しくなった――。
だが、神戸のセカンドセットは大仕事をやってのける。37分、退場した田中に代わってセットに組み込まれた廣瀬裕貴が中央でパスカット。そのまま持ち上がり、右前方の脇真太郎へ出す。脇は「何となく、GKの体重が(ファーサイドへ)傾いているような気がして」川原の左脇の下=ニアへシュート。これがゴールネットを揺らし、試合は再び振り出しに戻る。
浦安はすぐさまパワープレーを開始。だが、「4分ぐらいあれば、回して、回してってできるんだけど......。残り時間が短すぎた」とパワープレーのGK岩本が語るように、浦安は焦りからプレーが雑になってしまう。
前節で大阪に4点差で勝っていながら、パワープレーから一時ひっくり返された神戸のディフェンスだったが、今日は同点だったこともあり選手の集中力はしっかり保たれていた(相変わらず守り方は危なっかしかったが)。
残り1秒。稲田の左サイドからのキックインを藤井がシュートするが無常にもボールはゴールの左へ外れる。タイムアップのブザーが鳴り響く。浦安にとってはいろいろな意味で「終わり」を告げるブザーだった。何人かの選手の目は赤くなっているようにも見える。
試合後、シト監督は「優勝は非常に難しくなった」と事実上の"白旗宣言"をした。監督交代に揺れる名古屋を尻目に序盤戦は首位を走った浦安。一時は名古屋と勝点差5をつけたが、長野セントラルでの2引き分けと、北九州セントラルで名古屋との直接対決で敗れたことが決定打となった。
「名古屋と他のチームでは、環境面で非常に差がある状況。仮にリーグが9月まで続いたとしても、その差は広がる一方だろう」。シト監督は最近の会見のお約束となっている、プロとアマの差について語った。ここまで"勝負師"シト監督の手腕と経験豊富な選手の力で、内容的にはよくない試合もモノにしてきた浦安だったが、ここに来て力尽きた感じだ。
次節で浦安が大阪に負けた場合、名古屋が花巻に勝てば、名古屋の優勝が決まる。




