【大会後レポート・2】
 サッカー・フットサルライター菊地芳樹氏が見た選手権・その1
  フットサルは
  普及したのか?


 今年の大会でまず感じたのは、出場した各チームの「フットサル慣れ」である。1試合とんでもない大差のついたゲームが出てしまったが、その他には以前の大会で見られたような、見ている側が恥ずかしくなる稚拙なゲームはなかった。組織で戦ったり、あるいは局面を打開できる個人を生かした戦いなど、レベルの良し悪しはあったにしろ、各チームが自分たちなりのスタイルを持って戦っているのが分かった。

会場の駒沢には毎日多くの人が観戦に訪れた
 これは各チームにフットサルはどういうものかという知識がついた証拠だろう。出場の中にはサッカーとの掛け持ちで参加しているチームも多いが、それでもピッチが狭くなったからといって戸惑うことはなく、むしろどのチームも狭いピッチではどんなことが起こるのかをよく把握したうえでのプレーが多かった。だから相手のプレッシャーに慌ててミスをすることはなかったし、不用意に前掛かって相手のカウンターにはまるというシーンも激減した。大会全体のレベルは着実に上がってきている。

 この現象を見れば、フットサルが全国に普及しているとつなげたいところだ。もちろんその効果もあるのだろうが、ちょっと踏みとどまって考えてみたいところもある。それは今回出場した12チームのうち、多くがこの本大会をこれまで経験している点だ。例えば東北代表のBFC/ParagostoはFC小白川時代からの3年連続出場。中国代表の広島F・DOは大会の常連だし、人口の多い関西でも常にBORDONが出場してくる。九州代表の沖縄かりゆしFCも2回目の出場だし、四国のSTANDARD2001も全国の経験者だ。

 つまりどの地方でも彼ら1チームしかフットサルに力を入れていないのである。過去の全日本選手権でレベルの高いチームと対戦して刺激を受け、自分たちなりにフットサルを研究して再び、あるいは三度挑戦してくるという図式なのだ。それだけに全日本本大会のレベルとしては何とか体裁は整うものの、これからのレベルアップという点では不安が出てくるのである。広島F・DOは関西に出向き、BORDONとの交流によってレベルアップに励んだという。ただ一番いいのは同地域にレベルの高いフットサルを目指すチームがいくつもあって、日常的に切磋琢磨できる環境があることだろう。そのためには全国に出たチームや関係者が中心となって、各地域、都道府県のフットサルを活性化させていく努力が必要になる。

王者に返り咲いたFIRE FOX。
 そして普及については、このスポーツはこれまで全国的に「楽しめる大会」を開催してフットサルを知ってもらうという活動が主流だった。こうした下からの普及はとても大切なことだが、それだけではレベルアップという点にはつながっていかないだろう。全日本選手権のような大会で勝ちたいと思っている競技志向のフットサルを見てもらう、肌で実感してもらわなければ、普及という段階から新たな競技志向選手の獲得につながっていかない。フットサルの広がりを感じつつも、それが競技志向チームの増加に結びつかないのは、ハイレベルのフットサルを見る刺激がないせいだ。

したがってこれからは全日本選手権の地方周りということも検討してみていい項目だと思う。普段見ることのないレベルの高いフットサルを見られれば、そこを目指そうという選手たちがもっと出てくる可能性がある。地元の代表が関東のチームにやられるのを目の当たりにして、もっと頑張らないといけないと対抗意識を燃やす地域だって出てくるだろう。そのためには地方にも肌で触れられるところに大会を持っていくことである。

(その2につづく)

written by Kikuchi Yoshiki

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